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太陽の季節がやってきて、じんわりと汗ばむ私たちの身体。汗の粒の中には、どんな秘密が隠されているのだろう?ともすると疎まれがちなこの存在は、人類が最も発達させてきた崇高な体温調節システム。さらには心と身体の映し鏡である汗についていま向き合ってみよう。
発汗の精密な仕組みには、あっと驚く秘密がいっぱい! 知れば誰かに話したくなる、知的好奇心を揺さぶるユニークな雑学で、ミステリアスな汗の世界にもっともっと触れてみましょう。
Index
Q1 水を飲めば飲むほど汗は出るの?
水分の摂取量と汗の排出量はイコールではありません。「身体の中に溜まった水を出すために汗が出るわけではありません。仮に、汗をかけていない人が浮腫みやすいかと言えばそうではありません」(室田先生)。発汗量を増やすにはやはり、日頃の運動が近道。
Q2 永久脱毛をすれば汗が増えるのは真実?
永久脱毛と多汗症の医学的因果関係はまだはっきりと解明されていません。「脱毛の皮膚刺激により普段働いていない汗腺が動き出して多くの汗をかくようになった」という説もあるが、精神性発汗も想定されます。“ワキの汗の量が多いとイヤ”という不安がそれを現実化させているのかもしれません。
※参考:「汗とにおい対策で女子力UP!」五味常明(ユナイテッド・ブック)
Q3 辛いものを食べれば汗腺は鍛えられる?
辛いものを食べて出る味覚性発汗は、一瞬で汗が引くために量が少なく、いい汗をかくトレーニングとはいえません。「辛いものをよく食べる国の方がよりたくさん汗をかくような事実は確認できませんでした」(室田先生)。
Q4 太っている人はよく汗をかいている?
「能動汗腺は2〜3歳頃で決まり、その後変化しません。また、肥満の人は体表面が大きく、その密度はやせた状態よりも低いのです」(井上先生)。確かに脂肪は断熱的役割があるため、身体の熱を逃しにくくします。太っている人が汗っかきに見えるのは、体温が高くなっているからで“汗かき上手”とは言えないのです。
Q5 汗と尿は同じ成分でできてるの?
尿は腎臓で血液によってつくられます。まず、血液によって身体中の老廃物や有害物が腎臓に集められ、血液ろ過されると、不要と判断されたものが尿に。「汗は尿のように老廃物の排泄を目的としたものではなく、体温を調節するためのもの。そこに大きな違いがあります」(井上先生)。
Q6 タイ人は日本人より汗をかきにくいらしい?
これは本当で、子どもの頃に差はなく後天的なもの。熱帯地域に住む人が日本人と同じように暑さに反応していると必要な体液量が維持できないためだと考えられています。「身体が暑熱環境に適応していき、なるべく汗をかかず熱を放散する仕組みを獲得するからだと考えられています」(井上先生)。
Q7 におう汗にはリンゴが効果的って本当?
アポクリン腺から出る汗が細菌によって分解されると、独特なにおいの汗、ワキガ臭に。これは体内の「リポタンパク」という物質生成を抑えることで予防可能。効果的なのはリンゴの繊維質。すりおろしリンゴを布に包んでワキに当てたり、食べたり飲んだりしても効果が期待できます。
Q8 「カバは赤い汗をかく」は都市伝説?
実はカバには汗腺や皮脂腺がありません。そのかわり、無毛であるカバの皮膚は乾燥や日焼けに弱いため、表皮にある分泌腺から透明な粘液性物質を出して皮膚を守ったり、細菌感染を防いでいます。この粘液は無色透明から徐々に赤く色づく特性があり、世にも不思議な“赤い汗”となるのだそう。
※参考:福岡市動物園HP「どうぶつ雑学4」
Q9 セーターはその昔フットボール選手のユニフォームだった?
セーターの語源には“汗をかかせるもの”という意味があり、1891年にアイビー・リーグのフッ トボール選手が汗をよく吸収するさっぱりした編物のブラウスをトレーニング着に採用したのが始まりと言われます。防寒着であるセーターが、元はジャージのような存在だったことは驚き!
参考:「新・田中千代服飾辞典」渋谷ファッション&アート専門学校
Q10 いますぐ止めたい汗に舞妓さんも行う半則発汗ってなに?
汗には、皮膚を圧迫した側の汗が減り、その反対側の汗が増える『半側発汗』という性質があります。その法則を利用し、舞妓さんは帯で胸部全体を圧迫することで上半身の汗を抑えていると言われています。「上半身の汗を止めたいときに、試してみてよいのかもしれません」(室田先生)。
教えてくれたのは…
「大阪国際大学」 スポーツ行動学科教授・医学博士 井上芳光先生
スポーツ生理学、温熱生理学、生理人類学の分野で発汗について研究。雑誌やテレビで、汗にまつわる企画の監修も手がける。環境省『熱中症環境 保健マニュアル2018』編集委員。著書に『体温II: 体温調節システムとその適応』(ナップ)がある。
「長崎大学大学院」 医歯薬学総合研究科 皮膚病態学 教授 室田浩之先生
アレルギー疾患、膠原病、無汗症や多汗症などをはじめとする皮膚疾患の治療のエキスパート。かゆみの仕組み、発汗異常症などについて研究。著書に『汗の対処法update(MB Derma)』(全日本病院出版界)がある。
「漢方カウンセリングルームKaon」代表 樫出恒代先生
漢方カウンセリングと、バイタルフットヒーリングで一人ひとりの心と身体に向き合ったケアを行う。漢方アドバイザーを育成するセミナー「Kaon漢方アカデミー」には毎回多くの参加者が集い、今年7月から14期を迎える。
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illustration : Misa Itoi edit&text : Ai Watanabe re-edit:Yuri Iwata[press lab]
※kiitos. vol.20(2021年8月6発売)より抜粋。
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