FASHION

出典:秋になると、私は《エーイークロージャ―》のスクールマフラーをアクセサリー代わりにする。【FUDGE GIRLのためのアクセサリークリップス】

 

連載『お洒落さんのためのファッション用語辞典』では、トラッドファッションから最新のファッションまで、FUDGEでおなじみのファッション用語についてわかりやすく解説します。第16回目は「スクールマフラー」について。どこで生まれ、どのようにして世界じゅうに広まっていったか、その歴史をひも解きます。この連載を読んでファッション用語の背景や起源を知れば、毎日のお洒落がより楽しくなること間違いなし!

 

【用語解説】

まずは「スクールマフラー」を知ろう

「スクールマフラー」とは、イギリスやアメリカの伝統校に見られるマフラー、あるいはその類似品をさしていいます。たいていが柔らかいウール地製やニットで、横縞(ボーダー)や縦縞(ストライプ)柄であったり、学校の頭文字や校章などをポイントにあしらわれたりしたデザインです。スクールブレザーを作った後の残布で作ることもあります。正式なものはラインの本数や配色が、学校ごとに決められていて(スクールカラーに合わせてある場合がほとんど)、長いものは「シックス・フィッター」と呼ばれることもあります。

ちなみにマフラーは平均的なものは幅30㎝×長さ130㎝~150程度で、このサイズのマフラーは「並み型」と呼ばれます。それを超えるサイズ、幅45㎝×長さ180㎝程度のマフラーはロングタイプとなり、そのロングタイプが「シックス・フィッター」に該当します。「シックス・フィッター」より長い10フィート(3.048m)を超えるタイプのマフラーは「テン・フッターズ」と呼ばれます。

 

【歴史】

英国カレッジにおいてはIDのような存在

確かなことはわかっていませんが、1800年代後半には英国で校章などが入ったマフラーがブレザーやネクタイなどと共に広まったようです。

出典:英国カレッジアイテムが揃う《エーイークロージャー》のスクールマフラーでトラッドスタイルを完成させて【FUDGE GIRLのためのアクセサリークリップス】

 

たとえばイギリスでは最大手と言われるウール製のカレッジマフラーのサプライヤーで、大学関連のウエアや雑貨を手がける《RYDER & AMIES(ライダー&エイミーズ)》は、1864年以来ケンブリッジ大学のカレッジごとのスクールマフラーのデザイン、製造を手がけています。

FUDGE GIRLにもなじみのある、マフラーブランド《A.E. Clothier(エーイークロージャー)が学生街であるケンブリッジに創業したのは1930年。イギリスのブランドが次々と海外に生産拠点を移すなか、小規模ではあるものの今も変わらずケンブリッジにある自社工場にて生産を続けています。マフラー以外にもネクタイ、ソックス、ニットキャップなどを販売。学生たちが日常的にのぞく洋品店のような役割を担っているのです。

 

そもそも英国の大学はカレッジ制と言われる連邦大学制を取っています。例を挙げると、オックスフォード大学は39、ケンブリッジ大学は31のカレッジで構成されています。各カレッジが独立した組織であり、それぞれに図書館や食堂、談話室、宿泊施設、スポーツ施設などが存在しています。アメリカが多くの州から成り立っているのをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。いわゆる学部は各カレッジの中に多数存在し、トータル100を優に超える以上の学部が存在しています。各カレッジでエンブレムやカラーが異なるため、同じだけ、デザインの異なる「スクールマフラー」やネクタイ、スカーフ、その他雑貨などが存在するのです。

 

大学生だけではありません。ケンブリッジやオックスフォードなどの名門大学への入学を目指すティーンエイジャーたちが学ぶパブリックスクールにも、同様に学校の存在感を示す制服や校章入りのアイテムが存在し、「スクールマフラー」もそのひとつ。

学生たちが自らの属性をアピールするのにはそれらが不可欠であり、つまり「スクールマフラー」などの大学関連グッズが伝統的に身に付けられているのには、それだけ愛好心や誇りを持った学生が多く存在するからと言えるのかもしれません。いっぽうで裏を返せば、歴史的階級社会と言われるお国柄が色濃く出ているとも解釈できるでしょう。

 

【雑学】

映画『ハリーポッター』では各寮のシンボルカラーで彩られたマフラーが印象に残る

所属する場所ごとに違う「スクールマフラー」を身に着けている学生を見ることのできる代表的な映画のひとつが、ご存じ『ハリーポッター』シリーズです。物語の背景となるホグワーツ魔法魔術学校には4つの寮があり、登場人物たちはそれぞれの寮で暮らしています。そして彼らがその寮のカラーを配したマフラーを首に巻いているのがとても印象的です。

実在しない魔法学校ですが、寮ごとにエンブレムやカラーが異なるだけでなく、生徒の性質も分かれているのは英国カレッジごとに個性が異なることと通じるところもあり、必見です。

 

ハリーポッターが入った寮「グリフィンドール」はエンジ×イエローがシンボルカラー

 

「ハッフル・パフ」はカナリアイエロー×黒、「スリザリン」はダークグリーン×シルバー、「レイブン・クロー」は青×青銅がそれぞれのシンボルカラー

出典:ライン柄でちょっぴりスクールガールテイストに。《キュール》のエコファーマフラー【FUDGE GIRLのためのアクセサリークリップス】

 

「スクールマフラー」のルーツを知ると、なぜトラッドスタイルにこのストライプ柄のマフラーが欠かせないかわかったのではないでしょうか。英国の伝統校に所属しているわけではなくても、世界じゅうでデイリーに取り入れる人も多い「スクールマフラー」。最近では、より身近な感覚で使えるエコファー素材のものも登場しているようで、この秋冬にはぜひ積極的にトライしてみてくださいね。

 

 

監修:朝日 真(あさひ しん)

文化服装学院専任教授、専門は西洋服飾史、ファッション文化論。早稲田大学文学部卒業後、文化服装学院服飾研究科にて学ぶ。『もっとも影響力を持つ50人ファッションデザイナー』共同監修。NHK『テレビでフランス語』テキスト「あなたの知らないファッション史」連載。文化出版局『SOEN』他ファッション誌へ寄稿多数。NHK「美の壺」他テレビ出演。

 

illustration_Sakai Maori
edit & text_Koba.A

 

 

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