FASHION

選び抜かれた素材、丁寧な仕立て、細部まで計算された美しいシルエット……。いいセーターは、纏うだけでほくほくした気分になれるから不思議。いつもよりちょっぴり背伸びをして、長く愛せる1 着を迎えてみない ?

纏う宝物、あなただけのセーター

¥110000[配送手数料別](気仙沼ニッティング)

13年が経った今も、私たちの記憶に深く刻み込まれている東日本大震災。震源地からほど近く、大規模な被害を受けた宮城県気仙沼市で、ニットブランド《気仙沼ニッティング》は生まれた。復興支援の一環としてスタートしたこともあり、当時のオーダーはなんと300人待ち。現在では、すぐにお届けできる既製品も登場し、ラインナップもウエア8型と小物3型まで広がったことから、ブランドの存在がより身近に感じられるように。着る人を第一に思う素敵なコンセプトが込められたオーダー品の中からピックアップしたのは「Me」。毛糸はお気に入りの色を選んで、サイズも自分好みに細かくカスタマイズができ、裾に小さくイニシャルを入れることも可能。“編み手”と呼ばれる方々が、一目、一目、丁寧に編み上げた至極のセーターは、着続けることでどんどん自分のカラダに馴染んでゆく感覚が味わえる。シンプルだからこそ、シルエットや素材へのこだわりが光り、そして、長く愛し続けることができるのだろう。

 

心地よさの虜になる、極上アルパカニット

¥44000/THE INOUE BROTHERS…(ザイノウエブラザーズジャパン)

世界一と称されるアルパカニットを生み出す《ザ・イノウエブラザーズ》は、デンマーク・コペンハーゲンで生まれ育った兄・井上聡と弟・清史によって、2004年に設立。アルパカニット制作のきっかけとなったのは、友人の誘いで訪れたボリビア。そこで目にしたのは、貧困に苦しむ人々と児童労働の現実。土産物店には、アルパカの素材のよさを活かしきれない、土産風情のものばかりが並んでいた。「デザインの力があれば貧困問題への手助けや、アルパカ本来の価値を正しく伝えることができるのでは」と考えた彼らの強い思いから創り出されたセーターは、繊細ながらどこか力強さを感じるものばかり。写真は、生後3か月以内に採毛されるベビーアルパカを用いて編み上げたもので、柔らかい手触りとシルキーな見た目は上質そのもの。過酷なペルーでの環境を耐え抜くため、保温機能や温度調整機能、吸湿性にも長けた逸品は、今までに体感したことがないほど快適な着心地が楽しめる。

 

シンプルな美しさを追求する真のセーター

各¥30800/THISISASWEATER.(ヨネトミストア)

ニット製造業をはじめ、紡績、染色業が集結し、糸から縫製まで一貫生産ができる産地として、“ニット産業のまち”と呼ばれる山形県・山辺町。時代とともにその面影が新たな形に進化するなか、今もこの場所で名声を上げ続けている〈米富繊維〉。高度なニッティング技術の開発を行うなかで「セーターとは何か?」を改めて問い直し、生まれたのがオリジナルブランド《ディスイズアセーター》。キーワードは“イノベーション”と“コラボレーション”。熟練のスキルや知識、地域に根付く文化を生かしつつ、新たな素材や技術を取り入れたり、異業種とのコラボレーションに挑戦したりするなど、新しい価値観が加わった“本物”のセーターづくりに挑戦している。絶妙なぬめり感を追求した、カシミヤフレンチメリノ仕立てが魅力の「ア セーターイズ オーディナリー」は、ウール8、カシミヤ2の混紡率で、このセーターのためだけに考案された特別仕様。美しい発色は、上質な天然繊維を用いているからこそ。シンプルなデザインと直線的なシルエットで、老若男女問わず着られるのもいい。

 

英国伝統の技が息づくタイムレスな名品

¥65780/INVERALLAN(トラベルズ)

英国最大にして、アランニットの最高峰ブランドとして世界中から愛される《インバーアラン》。熟練のニット職人が最上級のピュアウールを約90時間、25000回以上編み込む事で完成するセーターは、アラン諸島の漁師が着用していたジャンパーが原型。糸の調達から出荷まで約6ヶ月以上かけて生産されているという、まさに時間と労力をかけた一級品。正規輸入による日本市場向けのセーターは、この伝統的なオリジナルのニッティングパターンを引き継ぎ、A級ランクのニッターが編み立てから仕上げまで、すべて手作業で行ったもの。認定品の証となるブラウンタグには、担当した職人のサインが入るという特別感も堪らない。《インバーアラン》の中で最も代表的なのが、ケーブル編みでつくられたプルオーバーのクルーネックニット「1A」。英国内で紡績された耐久性の高いアラン糸をハンドニット用にさらに太く撚り、しっかり目を詰めて編み上げた立体感と重厚感が特徴で、纏うとたちまち、あたたかさと安心感に包まれる。

 

これさえあれば!寒い冬も冷え知らず

¥51700/Andersen-Andersen(トールフリー)

2009年にアンデルセン夫妻によって設立された、デンマークのニットブランド《アンデルセンアンデルセン》。以前より、デンマーク家具のように機能的でタイムレス、素材へのこだわりや手づくり感を大事にしたブランドをつくりたいと考えていた2人。たまたま立ち寄ったセカンドハンドショップで見かけたフィッシャーマンセーターに、ニットデザイナーであった妻・カトリーネが強く興味を持ったことがブランド誕生のきっかけ。すべてのコレクションの特徴となるシンメトリーなデザインは、かつて航海中の船員が暗闇の中で服を着替える際に役立ったもの。この伝統を守りながら、セーターに前後を設けないことで特定の箇所にかかる負担を軽減させ、より長持ちさせることができるという新たな価値も加わった。軽くて柔らかく、通気性のよい100%ピュアニューウールを、厚手で弾力性に富んだ7ゲージのハーフカーディガン編みで仕立てた1着は、真冬でもコートがいらないほど、からだをぎゅっと包み込むようなあたたかさを体感できる。

 

時代を超えて愛されるベーシックな佇まい

¥33000/BATONER(バトナー)

県内随一のさくらんぼの産地として有名な山形県寒河江市は、戦時中より羊の飼育が奨励され、戦後にはニットの一大産地として成長。この地で1951年に創業した老舗ニットメーカー〈奥山メリヤス〉が手掛けるのが、ニット専門ブランド《バトナー》。
“バトンを継ぐ者”を意味し、歴史をつくった先人たちが築いたニット技術を未来へ伝えたい、という思いが表現されている。最大の魅力は、時代に流されないベーシックなデザインと、高品質な山形産のウールニットがリーズナブルに入手できること。品質、デザイン、価格のバランス感がブランドの強みであり、唯一無二のファクトリーブランドとしての地位を確立している。冬シーズンの定番となった「モヘヤノルディックセーター」は、スーパーキッドモヘヤ、スーリーアルパカ、メリノウールの天然素材3つを混紡。このシリーズ専用に開発されたオリジナル糸を使用しており、ローゲージで驚くほど軽く、優れた保温性を持つ。もちもちとした生地に包み込まれる瞬間は、まさに幸せそのものである。

 

ブリティッシュウールの贅沢なぬくもり

¥23100/macalastair(ブリティッシュメイド 銀座店)

ブリティッシュウールの産地であり、多くのニットメーカーが集まるスコットランド。ニットづくりの歴史と伝統が根付くこの場所で、1981年に誕生した《マカラスター》は、3代に渡ってニットウエアを製造してきたマッキノン家の1人、アラステア・マッキノンにより創設されたブランド。職人たちの熟練した技術や、世界遺産に登録されている紡績工場で紡がれた貴重なウール糸を使用するなど、古き良き伝統も継承。マシンメイドによる大量生産が主流の現代ではほとんど使われなくなった、手作業で編み立てるハンドフレーム製法(手編み機)を守り、手づくりならではの豊かな風合いとぬくもりを大事にしている。ネップ入りシルクブレンドで仕立てられたセーターは、世界生産量わずか3%と希少価値も品質も高いウールを使用。気温の変化が激しいイギリス育ちの羊の毛は、弾力性、復元性に優れ、型崩れしにくく、天然のアウトドアウエアと称えてもいいほどの保温、吸湿発散性を持ち合わせる。いつの時代にも馴染む、シンプルで潔いデザインもいい。

 

トラッド×モダンが生み出す新定番

¥25300/ISLAND TIDES(セムインターナショナル)

Island=島(イギリス)、Tides=潮流(ファッションの流れ)を意味する《アイランド タイド》は、イギリスファッションの伝統と流行をミックスしたニットウエアを提案するブランド。素材、仕上げ、デザイン、それぞれの得意分野を活かして、ひとつではなく、複数のニット工場へ発注をするという柔軟な生産体制を構築し、品質とバリエーションを日々追求。過去に依頼していたラインの中には、100年以上の歴史を持ち、英国王室御用達のニットブランドも手掛ける、技術と信頼のある工場とのお付き合いも。写真は、アイスランドに古くから伝わるトラディショナルな編み方、アイスランディック柄が印象的なシャギードッグセーター。トゲを持つアザミの花頭で、セーターの表面を引っ掻いて仕上げを行うことで、モヘアに似た起毛感を再現している。素材は、高い伸縮性に加え、やわらかな手触りとあたたかさが特徴的なブリティッシュウールを採用。肌当たりが少なくゴワつかないシームレス仕立てだから、着心地だってお墨付きなのです。

 

photograph_Suganuma Shotaro
edit_Nozaki Nanami 〈KIP Inc.〉
design_Yamamoto Katsura

 

FUDGE vol.257 2024年12月号より

 

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