ONKUL
本来食べられるのに廃棄されてしまう食品の多くは、地球環境にとって様々な影響や問題を引き起こす。《野菜をMOTTO》は、限りある資源を無駄なく食べきるため、静岡県内の農家とタッグを組み、新メニューを開発中。そんな《野菜をMOTTO》の取り組みを、菊池亜希子さんが現地へ出向き、徹底リポート。
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1本1本丁寧に収穫され、100年以上続く麻機地区特産の「あさはた蓮根」
「あさはた蓮根」は、その名前の由来ともなる、静岡市葵区の竜爪山の麓に広がる麻機(あさはた)沼で栽培される。しゃきしゃき、もっちり、ほくほく、という独特の食感で、かの徳川家康公も好んで食したという逸話が残るほど。現在は後継者不足などの問題もあり、作寸面積は約0.5ヘクタール、年間収穫量は5トンほど。直径約10cm、節が長く全長で1メートルほどにもなる「あさはた蓮根」は、1本1本手作業で収穫する必要があり、今や幻のれんこんとも呼ばれている。
手間暇とつくり手の想いが、幻の蓮根のおいしさの秘密
静岡の伝統野菜である「あさはた蓮根」の生産者で、つくる委員会の委員長を務める村上四郎さん。定年退職後にこの仕事を引き継ぎ、年間約500キロをひとりで収穫している。ちょうど収穫前の秋口。背が高く青々と蓮根の葉がしげる村上さんの畑にお邪魔して、お話しを伺いました。
菊池:「あさはた蓮根」の特徴を教えてください。
村上:節と節が長い備中種です。茨城あたりではぷくぷくとしただるま蓮根が主流ですが、静岡近辺では長蓮根を作っています。
菊池:どのように栽培しているんですか?
村上:「あさはた蓮根」は長さが1メートルほどにもなるため、傷つけないように掘り出すには手作業でなければなりません。機械を使うなどして毎年すべてを収穫し、種ごと植え替えてしまえば、全体的な収穫量も上がるのですが、そのような収穫方法のため大量生産が難しく、土の中に翌年の種として使う蓮根を残しながら栽培しています。
菊池:1年間通して育てると聞きました。大変な作業ですが、生産サイクルはどのように?
村上:だいたい3月頃にはすべて収穫が終わるので、畑に肥料を入れながら機械で耕します。雑草が生えてくるので年間3回ほど除草しながら、5月ころから約3週間置に4〜5回ほど肥料を与えて、8月ころからは収穫を待つばかりに。10月に入れば委員会としても蓮根を出荷できる状態になるので、収穫を開始します。そこから3月ころまで、約半年間は収穫時期があるんです。これだけ長く収穫できる野菜は他にないと思いますね。手作業で掘り出すのは重労働ではありますが、収穫時期が長いぶん、自分のペースで働けるのはいいところだと思います。
菊池:収穫できる半年間で味に変化はありますか?
村上:それほど差はありませんが、やはり10月からお正月くらいまでのものがより美味しくいただけるかなと思いますよ。
菊池:今回の《野菜をMOTTO》さんとの取り組みについてどう思いますか?
村上:もともと収穫量自体が少ない品種なのですが、脇目の細かいところや、細すぎるもの、傷がついてしまったものなどは“規格外”として流通します。ただ、もちろん味にはまったく遜色がありません。蓮根の特徴ゆえ、どうしても全体の1割程度は出てしまうその“規格外”を活用してもらえるのは嬉しいこと。もっとたくさんの方に歴史ある「あさはた蓮根」のおいしさ、希少さを知ってもらいたいという思いから、この取り組みに賛同しました。
余すことなく、まるごと食べる。 スープをきっかけに地域とつながる
静岡の稀少品種「あさはた蓮根」の規格外野菜を活用しサスティナブルな農業を支援する、またその美味しさをもっとたくさんの方に知ってもらうべく立ち上がった《野菜をMOTTO》の新メニュー開発プロジェクト。食卓という身近な場所からメッセージを伝えられるよう試行錯誤する、《野菜をMOTTO》開発担当の神谷さんに話を聞いた。
__これまで《野菜をMOTTO》でどんな商品を手がけられましたか?
神谷:豚汁、雑誌『FUDGE』コラボレーションの2品、チリコンカンカレー、野菜カレーの5種類です。
__「あさはた蓮根」を使ったメニューの開発がスタートしたのはいつですか?
神谷:10月から始まる蓮根の収穫に合わせて、2022年9月頃に始まりました。
__「あさはた蓮根」を使ったメニュー開発の依頼を受けたときの率直な感想を教えてください。
神谷:どうしよう、と思いましたね(笑)。スライスにしてもペーストにしても、選択肢がありすぎて。それに加えて、レギュラーや過去に発売したメニューとは違う新しいものを生み出すには、どうすればいいかなと思いました。
__どのようにして味を決めていきましたか?
神谷:最初は、クリーム系、ポタージュ系で進めていたんですが、味の想像がつかないようなものになってしまったんですね。もっと食べる人みんながわかりやすい味にしようと思って。そんなとき、「黒ごまポタージュは色にインパクトがあっていいよね」っていう意見が出たんです。黒いスープでごまを使うとなったら、やはり担々ベースが一般的だろうということで、決まっていきました。「あさはた蓮根」の歯ごたえや旨味はしっかりと感じつつ、花椒がぴりりと効いた、濃厚な味わいになっていると思います。
__作るうえでの苦労はありましたか?
神谷:味の方向性は見えたものの、担々ベースで商品を作ったことがある担当者が過去にいなかったので参考になる配合などがなく、一からオリジナルで積み上げていったことでしょうか。何度も試作を繰り返して、試食をお願いし、おいしいねと言ってもらって一安心する感じでした。
__4月の発売に向けて、みなさんにメッセージをお願いします。
神谷:まずは静岡を愛する地元の方々に食べていただきたいですね。それをきっかけに、スポットが当たらない野菜たちに目を向けてもらえたらうれしいです。菊池亜希子さんとコラボレーションした『onKuL』特別パッケージも楽しみにしていてください。
試作品を食べてみて..
菊池:パッケージを開けた瞬間、真っ黒スープにビックリ。黒胡麻たっぷりで見た目からワクワクしました。歯応えのある蓮根がゴロゴロ入っていて、食感も楽しい。程よくピリ辛で、ごはんにも合いそうだなと思いました。おかずとしても大満足で、もっと食べたくなるやみつき系の美味しさ。見学させて頂いた蓮根畑に想いを馳せながら、美味しくいただきました。心も体もぽかぽかです。
編集部:恥ずかしながら、今回の取材で初めて歴史のある「あさはた蓮根」を知り、また1本づつ手作業で掘って収穫するという現実にもビックリ。生産量や鮮度の問題で、静岡県内のそれも一部でしか手に入らない貴重な「あさはた蓮根」を、《野菜をMOTTO》のカップスープで全国で食べることが出来るようになるのはすごいこと。発売が本当に楽しみです。
2023年4月、新メニュー発売に向けてonKuLでも追加取材予定。お楽しみに!
@モンマルシェ 静岡清水本店
《野菜をMOTTO》の全メニューが揃うモンマルシェの旗艦店がリニューアルオープン!
《野菜をMOTTO》と、三陸沖水揚げの新鮮な魚を使った素材・製法・味を追求した缶詰シリーズ《オーシャンプリンセス》の2ブランドを展開する「モンマルシェ」。静岡・清水にある本店が、両ブランドの想いを体現した新たな装いでリニューアル。海外のマルシェのように、訪れた人とショップスタッフが楽しくコミュニケーションを取れるようなカウンターのある店舗デザイン。木箱をイメージした什器には、カラフルな野菜のようにスープが並べられる。
「モンマルシェ 静岡清水本店」
add:静岡県静岡市清水区本町1-7
tel:054-352-5515
open:10:00〜17:00 土曜・日曜・祝日休
お問い合わせ先:モンマルシェ株式会社
TEL:0120-285-530
野菜をMOTTO オンラインショップ:https://yasaiwomotto.jp/onlineshop
Instagram:@yasai_first
model : Akiko Kikuchi
photograph : Go Tanabe
styling : Kaho Yamaguchi
hair&make-up : Misako Nitta
edit : Shoko Matsumoto、onKuL
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