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3年ぶりの開幕となった「瀬戸内国際芸術祭」。その醍醐味と言えば、島をめぐり歩きながら、アートを楽しめること。港に、町中に、海岸に、森の中に、アートは様々な場所に出現し、島の暮らしに溶け込んでいます。9月、フランスのライフスタイルブランド《AIGLE》と犬島のアートプロジェクトの一つである「犬島 くらしの植物園」のワークショップが開かれました。どんな時間を過ごしたのでしょう?

 

まずは、今年の新作をいくつかご紹介!

豊島に仲間入りした「海を夢見る人々の場所」は、オーストラリアを代表する現代美術家ヘザー・B・スワンと建築家ノンダ・カサリディスのユニットによる作品。漁業が盛んな瀬戸内海らしく、漁網や流木のような質感の鉄鋳造によって表現されている。

ヘザー・B・スワン+ノンダ・カサリディス「海を夢見る人々の場所」 Photo: Keizo Kioku

実際に座ることができるので、空と海を眺めて黄昏れるのに最適な場所。島の小さなスケールは、人と自然の関係をよりシンプルなものに、人が自然の一部であることを感じさせてくれる。

 

男木島には、香川県生まれの現代アーティスト川島猛さんとボランティアスタッフ(ドリームフレンズ)による作品が登場。

川島猛とドリームフレンズ「瀬戸で舞う」 Photo: Keizo Kioku

63年に渡米し、以後ニューヨークを拠点に活動。リズミカルでハートフルな作品が特徴で、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久収蔵品に選ばれるなど高い評価を得ている。2016年の開催をきっかけに古里に戻り、島の人々とともに心を自由に躍らせる喜びを表現している。

 

そこにアートがあるだけで町がパッと明るくなり、島には元気と活力が満ちていました。《AIGLE》もまた、自然に寄りそい、自然とともにある地域でのくらしを応援するブランド。地域のために自分たちに出来ることはないかと考え、2019年から「瀬戸内国際芸術祭」に協賛。アーティストやボランティアスタッフへラバーブーツや手袋、衣装の提供を通して交流を深めてきました。9月、そのご縁から「犬島 くらしの植物園」でAIGLEのスタッフが参加するワークショップが開かれました。今号ではそのプログラムの一部をご紹介します。

 

植物とともに暮らす歓びを伝える「犬島 くらしの植物園」

船を降りて、穏やかな島を奥へと進むことおよそ10分、色とりどりの美しい草花が咲く一角に。その中をコッコッコッと放し飼いの鶏たちが元気に駆けまわる、まるで桃源郷のような風景に肩の力が抜けていく。ここが建築家の妹島和世さんとコミュニティガーデンデザイン「明るい部屋」による『犬島 くらしの植物園』だ。

迎えてくれたのは、「明るい部屋」の橋詰敦夫さん。犬島で暮らしながら植物を通じて生まれるコミュニティの楽しさを提案している。

「植物との関係がうまくいっているコミュニティほど 過疎になっても元気だということが分かりました。食べ物も自然も豊かで、良い循環が生まれるんです」と晴れやかな顔で話す橋詰さん。ウェルカムドリンクのハーブウォーターをいただきながら、植物園の成り立ちやそこに込められた思いを伺う。さて、園内をぐるっとまわりながら、花を摘んでいきましょう。

 

庭の植物を摘んで、サラダ作り

「入ってすぐのこのあたりは“集う庭”と呼んでいます。ゆっくり植物の間を歩いたり、ごろんと寝転がっても構いません。ガラスハウスの裏手は“食べられる庭”。向こうのキッチンやビオトープも整えているところです」食べられる庭には、かぼちゃやイチジクなどの野菜や果物、バジル、レモングラス、ステビアなどの各種ハーブ、そしてエディブルフラワーも。「すべて無農薬で育てています。見るだけでなく、触ったり、嗅いだり、ちぎって食べてみてくださいね」

「美味しい!」「甘い!」と感嘆の声はあちこちに。これはハーブティーに、これはお肉料理に・・・身体にどう良くて、どんな料理に合うかなど植物の豆知識も増えていく。「もったいないと思わず、どんどん摘んでくださいね。新芽が出やすくなって、次も元気に育ちますから」

摘んだ野菜や植物はマリネに混ぜて、仕上げにエディブルフラワーを散らせば、彩り豊かなサラダの出来上がり!植物本来の味や香りが活きていて、多幸感が身体中に広がった。

手入れそのものに意味がある。

ひと息ついたら、木陰で作業できる場所を選んで草取りのお手伝い。「ここでは、ダイカンドラというまぁるい葉っぱをカバープランツとして増やしているので、それ以外を抜いてください。犬島は太陽が強くて、雨が降っていないと土が固くなるんですけど、この植物のおかげで水持ちが少しずつ良くなり、土が柔らかくなり、ミミズも増えました」土を触わるという体験も久しぶりかもしれない。いつの間にか夢中になり、土を通じて会話も生まれる。

「草を取るために、と思うとこれは苦役にしかならないけれど、会話しながら楽しむくらいの気持ちでやってもらえたらと思います。こういう作業をしていると、ほら、ミミズとか出てこないかなぁと鶏が寄って来ましたよ」

「鶏たちは落ちた果実や小さな虫を食べてくれます。この作業で集めた草と鶏フンを混ぜれば立派な堆肥になり、また植物の栄養になる。草取りをすることで、こういった良い循環を生み出していて、みなさんも自然とその輪の中に入っているんです。ワークショップを通じて、植物に接する歓びを味わってほしい。これからもそんな場所を作り続けたいです」

知れば知るほど、触れれば触れるほど広がる世界。五感を使って植物に触れることで、心が和み、クリエイティブのマインドも刺激される。この秋、ぜひあなたも体験してみてはいかがでしょうか?

 

 

「犬島 くらしの植物園」

建築家・妹島和世さんと、植物とともに暮らす歓びをテーマに活動する「明るい部屋」による共同プロジェクト。長く使われていなかったガラスハウスを中心とした約4,500㎡の土地を、犬島の風土や文化に根ざした植物園として再生。完成された場として公開するのではなく、島の人々や来訪者に参加してもらいながら「くらし方」についてともに考え、長い期間をかけて作り上げていく植物園。また、手作りの循環システムをつくるなどサステナブルな場所として、それらを体験できるワークショップを提供している。

 

開園時間: 9:00 ~ 16:30

休園日:火曜日

瀬戸内国際芸術祭 秋会期:9月29日~11月6日 ※12月〜2月は全日休み

鑑賞料金 :無料

問い合わせ: 086-947-1112(犬島精錬所美術館)

※植物園を訪れた方にはご希望で《AIGLE》のラバーブーツやアウター、手袋などを貸し出しています。

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