メイクアップアーティスト・yUKIさんの旅模様を綴る連載企画「温泉にいこうよ。」。ふたり、ときどきひとりで日本各地に点在する温泉へ。その土地でしか体験できない“あたらしい”を見つけに。

神話の聖地で調えるお詣り支度の旅

美しい八雲が湧き出ずる島根県出雲・日御碕は、古来より“日本の夜を守る”夕陽の聖地として謳われてきた霊験あらたかな地。日御碕灯台や波立つ日本海を望む「界 出雲」は、車で約20分の距離に出雲大社が鎮座する温泉宿。1泊2日の滞在を通じて自身では体験できないお詣り支度を調えてくれる。

［旅する人］

yUKIさん｜メイクアップ・アーティスト＆ビューティーイノベーター

1990年渡仏、CHRISTIAN CHAUVEAUを卒業しディプロム取得。1998年帰国。ファッション誌やショー、広告で活動、女優・モデルからの指名でメイク担当することも。2009年には独自のメイクブラシブランド「ｙUKI MAKEUP」を立上げ、2019年「yUKI TAKESHIMA」としてリニューアル。その人本来の美しさを引き出すクリエイションに定評がある。Instagram: yukimake

【DAY1】八百万の神々が集う、清らかな土地に浸る

15:00　“海色禊”が旅のはじまり

日本海へ沈みゆく太陽のオブジェがフロントでお出迎え。時々刻々と趣を変える深い海のような空間に身を置くうちに、心が調ってゆく“海色禊”がインテリアのテーマ。館内には地元作家が手掛けた作品が随所に散りばめられ、島根のものづくりや営み、日御碕の情景が伝わってくる。「大自然に抱かれるような感覚で、都会のリズムをスローダウンしてくれます」（yUKIさん）

15:15　太古のロマン、出雲神話に想いを馳せる

“天下無双の大廈”と称えられる出雲大社の壮大な本殿を想わせる「ご当地楽広場」。柱巻に用いられている“来待石”は、松江市の限られた地域でしか採れない凝灰質砂岩で、古くから石灯籠などにも使われ、江戸時代には松江藩が藩外への持ち出しを禁じたほど希少な石。注連縄も出雲大社と同じ、飯南町の大しめなわ創作館で作られたものが飾られ、神聖な空気漂う憩いの空間。

15:30　時のパレットを映した「彩海の間」

出雲松島と呼ばれる海を望むタイプと日御碕灯台を望むタイプの２種類の客室。移りゆく海や空の彩りに心が満たされるようにという想いが込められている。

yUKIさんが宿泊したのは、朝日を眺められる海側のお部屋。朝の光と調和するように温もりあふれるピンク色の「石州和紙」で彩られている。寝室エリアのフォーカルポイントにもなっている「水平線」を表現したアートワークは、向かって右側が古くから石見地方の特産品として継承されてきた石州和紙を用いた「西田和紙工房」のもの、左側は100％楮の手漉き和紙を手紬ぎして生まれる“紙布”を用いた「結工房」によるもの。

「出雲大社お詣り支度プラン」を予約すると、「参拝指南書」「出雲大社御神酒八千矛（やちほこ）」、出雲大社御本殿がデザインされた「オリジナル御朱印帳」、出雲大社素鵞の社で交換したお清めの砂を入れる「かみまもり」のお詣り支度セット４点をお部屋に用意されている。

【出雲大社お詣り支度プラン】
1泊2日（2名・夕朝食付）￥42,000〜
※プランの詳細・予約はこちら

【出雲の薬草文化でととのう“ひとりご自愛滞在”】
期間：通年
含まれる内容：ハーブティーと島根和菓子のご褒美セット・和草温玉
料金：期間によって変動。予約時に確認
定員：1日2組
申込：宿泊の5日前までに専用プランにて予約
※プランの詳細・予約はこちら

16:00　“禊湯”について学ぶ「温泉いろは」へ

「界 出雲」の湯守りが、出雲ひのみさき温泉の泉質や効果的な入浴法をはじめ、神社に参拝する前の禊ぎ風呂としての湯浴みを指南してくれる。

16:30　「かわたれテラス」で旅モードにシフトチェンジ

遮るものが何ひとつなく水平線まで見渡せる「かわたれテラス」は、日の出の時間を表す「彼は誰時」の情景が映えるロケーション。「波の音や潮の香りを感じながら、ゆっくりと心の声に耳を傾けることができました」（yUKIさん）。日本海に佇む出雲松島を眺めながら、想いのままに過ごしたい。

17:00　白亜の灯台が佇む松並木をお散歩

石造灯台としては日本一の高さを誇り、“世界の灯台100選”にも選ばれている出雲日御碕灯台。周囲には松林と遊歩道が広がり、海食による変化に富んだ海岸線が連なる景勝地として知られる。お散歩の途中、灯台の麓の岩場でゴロンと横になって空を眺めたり、自然が織りなす造形美に触れてたっぷりアーシングしたyUKIさん。

17:30　“禊ぎ湯”で心身の穢れを祓う

出雲ひのみさき温泉は、塩分濃度が高い“塩化物強塩泉”。塩のベールが身体を包み込み、湯冷めしにくいのが特徴。海をも思わせる塩泉を“清めの塩”に見立てた禊ぎ風呂でお詣り前の身体を芯から調えたい。

19:30　出雲の旬の恵みで運を呼び込む「福神会席」

夕食には出雲の国づくりの神様、大国主命（おおくにぬしのみこと）へ御神徳を願い、旧暦の元旦に出雲大社で斎行される福神祭にちなんだ旬の会席を。先付けの「出雲そばの薯蕷寄せ」、のどぐろを中心とした新鮮な魚介など山陰らしい食材が口福を運び、お食事からもお詣り支度を調えてくれる。

日本海の幸をふんだんに味わえる「宝楽盛り」。お造りではカンパチやサワラ、底引き漁で水揚げされた深海魚の馬頭鯛をいただける。「縁起のよい器や華やかなおもなしからも福を招いていただきました」（yUKIさん）

福神祭でふるまわれてきた歴史ある郷土料理の「うず煮鍋」は、御神酒の「八千矛」を煮切った風味豊かなお出汁で島根名産の大穴子や大山鶏をいただける。お鍋の後の締めの雑炊には、奈良時代より貢納品として朝廷へ納められていた希少な岩海苔「十六島（うっぷるい）海苔」の磯の香りを添えて。

21:30　神様に捧げる舞「石見神楽」を鑑賞

神の御心を和ませるための神事だった「石見神楽」。時を経て伝統芸能として石見地方の土地の人々の手に受け継がれ、民衆の娯楽として親しまれるようになった。現在、石見地方から広島県にかけて約400の神楽団が存在し、秋祭りの夜にはさまざまな神社から神楽囃子が鳴り響き、舞が行われている。「界 出雲」では毎晩、出雲大社の起源となる「国譲り」という演目を披露。ダイナミックな舞いに触れて、神話の世界に誘われたい。

22:30　湯上がり処で過ごす宵のひととき

山陰地方でお馴染みの「白バラ牛乳」のアイスキャンティーを片手に夜の寛ぎタイム。ゆったりとした余白も旅ならではの大切な時間。

【DAY2】神々に新たなご縁を願い、運を開く

07:00　朝の光を浴びて心身をリフレッシュ

“神迎の道”の起点となる稲佐の浜は、国譲りの神話で神々が集う場所。朝日が降り注浜を目指して海を歩く神々をイメージした「稲佐の浜 神渡り体操」で、朝日が降り注ぐ出雲松原を眺めながら清らかな一日をスタート。

08:00　神縁を結び、出雲の幸で活力をチャージ

『出雲国風土記』に倣い地産の山海の珍味を神様へ献上する献立を再現した「神饌朝食」。こちらは「出雲大社お詣り支度プラン」予約者限定の朝食で、玄米、公魚、海士の塩、しじみ佃煮、日本酒などが並び、出雲大社へ出発する前に神縁がより強く結ばれることを祈願していただきたい。

隠岐の島の名産、あらめやサザエなど海の幸を取り入れた「あらめ磯鍋」はじめ、山陰地方のソウルフードとして親しまれている赤天、しじみ汁などがいただける「ご当地朝食」。自家製のヨーグルトには、日本海の潮風が育てた多伎いちじくのジャムを添えて。

09:00　神話や石見神楽の深淵に触れる

「手業のひととき」では、神楽面職人であり、神楽の伝統の守り人でもある「柿田勝郎工房」2代目柿田兼志氏より、現代まで受け継がれてきた歴史を学び、手ほどきを受けながら神楽面の絵付け体験ができる。※通常はチェックイン当日の13:30〜17:00に開催。

【手業のひととき「日本遺産に認定された『石見神楽』の守り人と学ぶ、神楽面の絵付け体験」】
期間：通年・隔月で開催（毎月第二・第四土曜日）※3月のみ第三・第五土曜日
開催時間：チェックイン当日の1:30 PM~5:00 PM ※アーリーチェックイン1:00 PM
料金：1名 15,000円 （税込・宿泊費別）
定員：1日3組（1名～6名）
集合場所：界 出雲
申込期限：宿泊日の14日前まで
※プランの詳細・予約はこちら

11:30　出雲旅の想い出にお土産選び

こだわりの窯元や工房から生まれた陶芸や染織などの工芸品から、恵まれた風土に育まれた食材まで多彩な品揃えのショップコーナー。山陰地方や島根の豊かな文化がお土産からも伝わってくる。

11:30　晴れやかな気分でいざ参拝へ

御神酒や禊風呂、お食事でも神縁を願い、お詣りに向けて心身を調えた1泊2日の滞在。澄み渡る青空の朝、軽やかな足取りで出雲大社へいざ出発！

TIPS FOR TRAVEL｜旅服コーディネート＆メイク事情

✔︎旅服コーディネート

「大らかでエネルギッシュな出雲の土地のパワーをいただけるようにイメージした着こなしです。アクティブさの中にも発色のいいピンクを差し色にして、やわらかな雰囲気をミックスしています」

・コート／バーバリー
・Tシャツ／HYKE
・パンツ、シューズ／HYKE×THE NORTH FACE
※すべて本人私物。現在販売を終了している商品もあります。

✔︎旅メイク

「“余白”をテーマに仕上げたメイクは、目の周りの際にミントグリーンのアイラインを引いて、眉周りはモスグリーンのアイブロウで整えています。口元はベージュのペンシルで整えた後、光を集めるグロスを重ねています。土台となるベースメイクを丁寧に作ることが、余白メイクのポイント」

・ベース／BISOU エンハンシングスティックN（クリスタル）
・UV／KAHI Airy fit Sun Stick
・リップ／sisley フィト リップ ツイスト（15 ナッツ）
・リップ／M·A·C リップガラス エアー（フローズン） 
・アイブロウ／ポール＆ジョー アイブロウ マスカラ 03（セージ グリーン）
・アイブロウ／AINOKI アルチザン ブロウ パウダー 02 玉響
・マスカラ／Hermèsトレ ドゥ エルメス クレヨン ユー 57 ヴェール・マラカイト
※現在販売を終了している商品もあります。

✔︎旅の必需品

「旅で過ごす時間の中でも大切にしているのが余白やゆとり。そのためにも普段と同じようにデジタルデトックスや口腔ケアをして、心地よい状態を保つようにしています。洗顔には旅先の自然や環境にも配慮した、天然由来成分100％のクレイソープを愛用中」

（左から）
・マッサージサロン チャハヤインダ／デジタルデトックス レメディ
・KS西日本株式会社／ルンルンジェル
・BISOU／ビズゥ コールドプロセス クレイソープ
※すべて本人私物。現在販売を終了している商品もあります。

今回のお宿は…「界 出雲」

日御碕灯台や風光明媚な日本海の絶景を望む温泉宿。出雲ひのみさき温泉の泉質は海を想わせる「強塩温泉」。出雲大社へ車で20分ほどの立地で、海を想わせる塩泉を清めの塩に見立てた「禊風呂」が愉しめる。過ぎゆく時間の流れとともに表情を変える大海原や夕焼けに染まる灯台を眺めながら、お詣り支度ができる。

住所：島根県出雲市大社町日御碕604
電話：050-3134-8092（界予約センター）
アクセス：【車】山陰自動車道・出雲ICより約30分【電車】JR出雲市駅より一畑バスにて約1時間、日御碕灯台バス停下車【飛行機】＜出雲空港＞レンタカー・タクシー：約40分、空港連絡バス：JR出雲市駅まで約30分、駅よりバス・タクシーで約40分
料金：1泊35,000円〜（2名1室利用時1名あたり、サービス料込、税込、夕朝食つき）
URL：https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiizumo/

photograph：Makoto Shamura
design：Atsushi Aihara
text：Ayako Watanabe
edit：kiitos.

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