kiitos.
メイクアップアーティスト・yUKIさんの旅模様を綴る連載企画「温泉にいこうよ。」。ふたり、ときどきひとりで日本各地に点在する温泉へ。その土地でしか体験できない“あたらしい”を見つけに。

豊かな自然と響きあい、カムイと出会う旅
さまざまな生命が宿るポロトの森が広がり、アイヌにまつわる伝承も多く残されている北海道・白老町。「界 ポロト」は、深い森に囲まれたポロト湖畔に佇む温泉宿。世界的にも稀な植物由来の成分を多く含む“モール温泉”が湧き出る、通からも愛される湯の里で自然のリズムと調和し、心と身体を満たすひとときを過ごしたい。
[旅する人]
yUKIさん|メイクアップ・アーティスト&ビューティーイノベーター
1990年渡仏、CHRISTIAN CHAUVEAUを卒業しディプロム取得。1998年帰国。ファッション誌やショー、広告で活動、女優・モデルからの指名でメイク担当することも。2009年には独自のメイクブラシブランド「yUKI MAKEUP」を立上げ、2019年「yUKI TAKESHIMA」としてリニューアル。その人本来の美しさを引き出すクリエイションに定評がある。Instagram: yukimake
新井ミホさん|ビューティーディレクター
大学卒業後、IT関連企業の広報や化粧品メーカーPRを経て、ウェルネス・オーガニック美容専門のPR会社ラキャルプを2012年に設立。植物療法や薬膳、ウェルネスライフにも精通。日本最大級規模サスティナブル美容展示会「ラキャルプフェス」を主催、2024年より地方自治体によるウェルネスツーリズムワーキング委員に就任。ウェルネス美容を通じサスティナブルな未来構築を目指し、環境課題や女性の社会課題のサポート活動にも積極的に取り組む。主宰する「ゆるナチュ美容塾」では会員募集中。詳しくはこちら。Instagram:mihoarai0527
【DAY1】アイヌの文化を慈しみ、ポロト湖畔で過ごす
15:00 白樺の木漏れ日が降り注ぐコタンの森へ

白樺や楓をはじめ、生きものたちの豊かな多様性がもたらすポロトの森を再現したアプローチ。「森の香りに触れながら、石畳を歩いて川のせせらぎに耳を澄ます。この時間がとっても大切」(新井さん)

エントランスまでの通路沿いには小川が流れる。
15:15 アイヌの人々の誇り高き文化に触れる
雄大な自然に囲まれた北海道やアイヌの人々の歴史や文化、工芸、この地に伝わる物語などさまざまな本が並ぶ「トラベルライブラリー」。エントランスからつながるこちらの空間にも白樺の丸太が設えられ、森に溶け込むような感覚を覚える。

チェックイン後、ひと休みするおふたり。木彫作家の岡田実さんが手掛けたアイヌの伝統文様の風鈴が窓辺を涼やかに彩る。「気になる本がたくさんあります。リラックスするのはもちろん、旅の入り口にもぴったりな空間です」(yUKIさん)「新しい学びや発見が旅の豊かさや愉しみを深めてくれます」(新井さん)

「トラベルライブラリー」では、本とハーブのペアリング体験「花香る、オリジナルティーブレイクセット」も愉しめる。北海道地方で古くから飲まれてきたシソ科の植物の「エント茶」はじめ、さまざまなハーブの中から好みの味にブレンドしたお茶をいただきながら寛ぎの旅時間を。

書棚にはアイヌの人々の尊い文化や歴史に触れられる名著が並ぶ。
15:30 アイヌ民族の暮らしを映す客室「□の間」
アイヌ民族の伝統的住居“チセ”に着想を得て設計された「□の間(しかくのま)」は、部屋の中心にある四角い“炉”をイメージしたテーブルが特徴。“大切な人と寛ぎのひとときを過ごしてほしい”という想いが込められている。
「ポロト湖を引き込んだ雄大な景色とお部屋やテラスの白樺の設えが調和して森に溶け込んでいくような感覚になりました」(yUKIさん)。オープンエアのテラスで開放感に浸りながら、おしゃべりが弾むおふたり。

アイヌ文様で彩られたベッドルーム。「界」オリジナルのベッド「ふわくもスリープ」は芯で身体を支えながら、ふわっとした雲の上のような寝心地で極上の眠りを叶えてくれる。

客室に散りばめられている力強くも温もりに満ちたアート作品。アイヌ民族の文化に想いを馳せて、大地の恵みへ感謝するやさしい気持ちが自然と湧きあがる。

アイヌ刺繍の第一人者、津田命子さんの監修による美しい意匠の壁紙。

アメニティを包むオリジナルの風呂敷は、さまざまな生命を育むポロトの深い森の色。
16:00 心と身体を調える入浴法を学ぶ「温泉いろは」へ
温泉の泉質や立地、環境資源など多くの知識を持つ「界 ポロト」の湯守りが、白老温泉の特徴や明日への活力を生み出す効果的な入浴法を指南してくれる。
16:30 とんがり屋根の湯小屋「△湯」で至福の湯浴み
「界 ポロト」を象徴する「△湯(さんかくのゆ)」は、アイヌ建築の特徴“ケトゥンニ”構造のユニークな設計、アイヌの人々が漁や狩猟の際、寝泊まりしていた仮小屋“クチャ”がその原型。内風呂には源泉かけ流しの「あつ湯」、心身を鎮静させる「ぬる湯」のふたつの湯船があり、露天風呂では四季折々に表情が変わる景色とともにポロト湖との一体感を感じる湯浴みを堪能したい。

世界的にも希少な“モール温泉”を源泉かけ流しで満喫できる内風呂。天然植物由来の腐植質を含み、皮膚の再生を促進させる働きがある“フミン酸”、皮膚のコンディション作用のある“フルボ酸”が豊富。“天然の化粧水”ともいわれるほどの泉質でまさに“美肌の湯”。入浴後、潤いのあるなめらかな肌を実感したい。

入浴時に身体から失われる水分は約800mL。湯上がり処でいただける「カシス酢」「イタドリ茶とほうじ茶のブレンドティー」でしっかりと水分&ビタミン補給を。

三角窓から移ろいゆくポロト湖の景色を眺めて、温まった身体をクールダウン。
18:00 北国の美食を味わう口福のひととき
アイヌ民族が交易の際に使用していた丸木舟をモチーフとした器に八寸、お造り、酢の物を盛りつけた「宝楽盛り」。
「おいしさを際立たせる華やかなプレゼンテーションに心も満たされました」(yUKIさん)、「豊かな大地で育まれた滋養たっぷりの旬の食材をいただいて、お食事からも土地とのつながりを感じられた贅沢な時間でした」(新井さん)。

じゃがいものすり流しにいくらを添えた「馬鈴薯海宝盛り」は先付けの一品。アイヌ信仰で山の神でもある熊の愛らしいおもてなしも嬉しい。

北国の海鮮醍醐鍋会席ではメインの台の物に「北国の海鮮醍醐鍋」をいただける。魚介をたっぷり煮込んで裏漉しした濃厚なスープ仕立てで海の幸を存分に堪能したい。
20:00 アイヌ伝統歌「ウポポ」を歌い継ぐ
地域の文化を紡ぐ人たちの技に触れるご当地文化体験の「手業のひととき」。「界 ポロト」では、五線譜ではなく先人より口伝いで受け継がれてきたアイヌの民族音楽の魅力を体感できる。伝承者、髙橋志保子さんの歌声に耳を澄まし、旋律と歌詞を口ずさみながら歌い継ぐ“口承文芸”を実体験し、参加者同士で合唱や輪唱にもチャレンジ。地域色あふれるプライベートな経験がアイヌ民族の魂と溶け合う豊かさをもたらしてくれる。
手業のひととき「アイヌ伝統歌『ウポポ』を奏でるひととき」
◾️期間:2026年2月28日(土)まで(土日限定 ※除外日あり)
◾️時間:20:00〜21:00(1日3組 ※1組につき1~3名・最大9名まで・2名より実施)
◾️申込み:7日前までに要予約
◾️料金:1 名 6,500 円(税込・宿泊費別)
21:30 自然の恵みをいただく「コタンの宵の集い」
身のまわりのあらゆるものに魂が宿り、神様(カムイ)として敬意を讃えて共生していたアイヌ民族。「コタンの宵の集い」では、アイヌ民族が大切にしてきた火のカムイに感謝の気持ちを込めて炉を囲み、ご当地ならではのお酒やおつまみを愉しめる。アイヌ語で“続く”という名のニセコ生まれの「ohoroジン」、北海道産白ブドウのナイアガラを100%使用したオレンジワイン「MAOI ナイアガラ・アンバー」など、こだわりのお酒のセレクトにも注目。

アイヌの文化では、お酒は酔うための飲みものではなく神様たちに歓びを与えるもの、平和や豊かさをもたらしてくれる神聖なもの、そしてつくり手や多くの人の想いが詰まった貴重なもの。「今夜は誰かのために、人のために召し上がってみてください」というメッセージとともに神にお酒を捧げる際、用いられた漆器の杯にお酒を注ぐ。

「ドリンクとおつまみセット」では、お好みのお酒と燻製にした鮭のハラスのペアリングがいただける。鮭は“神の魚”で、神々の国からアイヌへの贈りもの。アイヌ文化やその精神性に想いを馳せながら、恵み豊かな旅の夜を。
「コタンの宵の集い」
◾️期間:通年
◾️時間:20:30/21:30/22:30(定員:1回6名まで)
◾️申込み:到着後フロントにて各開催時間30分前まで
◾️料金:ドリンクのみ 1,500円(税・サービス料込)、ドリンク・おつまみ 2,000円(税・サービス料込)
TIPS FOR TRAVEL|旅服コーディネート&メイク事情
旅もおしゃれも大好きなyUKIさんと新井さん。それぞれの1日目の旅スタイルとメイクのこだわり、愛用のトラベルアイテムをご紹介。
[DAY1|yUKIさん編]
✔︎旅服コーディネート
「都会から旅立ってきたという余韻を残しながら、デニムやエスパドリーユの足元でドレスダウンしています。直感で選んだコーディネートですが、アイヌの鮮やかなテキスタイルと色合いがリンクして、旅のおしゃれの愉しさを実感しています」
・ベスト/MAYLAN
・パンツ/HYKE
・シューズ/GUCCI
※すべて本人私物。現在販売を終了している商品もあります。
✔︎旅メイク
「鮮やかなマゼンダ色のリップを添えた口元が主役のメイクです。眼元はパープルなどのカラーマスカラで涼やかな印象に仕上げるとバランスよくまとまります」
・ベース/BISOU エンハンシングスティック N[クリスタル]
・ハイライト/BISOU ダイヤモンドグロウ[ルナ]
・マスカラ/ETVOS ミネラルニュアンスカラーマスカラ アンバーオレンジ
・マスカラ/THREE ワイズアイズパースペクティヴ マスカラ X01 LUSH LANDSCAPE
・リップ/HERMES ローズ・ポップ ルージュ エルメス ルージュ ア レーヴル マット
※現在販売を終了している商品もあります。
✔︎旅の必需品
「北海道の日差しの下、夏の日焼けを愉しみながら、乾燥からもお肌を守ってあげられるようなアフターケアアイテムです。アロマ系のヘア&ボディオイルは全身に使えるタイプ、バームは女性のデリケートゾーン、赤ちゃんや犬の肉球にも使えるほど肌にやさしいので一緒に旅する人のケアもしてあげられます」
(左上から時計まわり)
・ICOR/Sake フェイシャルマスク
・Sphere/スフィア・ピュア・シーソルト フォー ティース シラユキ
・aroma-Pathi/ボディケアオイル Peaceful-Fresh(ピースフルフレッシュ)- 木 –
・FTC/FTCナチュラル UVクリームX(TEN)
・elixinol/エリクシノール CBDバーム〈チルミント〉
・Nature Plants Skincare/NP与那国のしずく(マッサージ用高濃度にがり)
※すべて本人私物。現在販売を終了している商品もあります。
[DAY1|新井さん編]
✔︎旅服コーディネート
「飛行機や車での移動を意識して、動きやすさのあるしなやかな素材のアイテムを選びました。ワイドパンツのマスタード色は自然と調和するようなイメージです」
・ベスト/TOMORROWLAND
・パンツ/MYLAN
・シューズ/Jimmy Choo
※すべて本人私物。現在販売を終了している商品もあります。
✔︎旅メイク
「口元に赤いリップを差して、新しい土地での刺激を想い浮かべながらアクティブな印象に仕上げています」
・ベース/Waphyto UVクリーム ピンクグロウ SPF40 PA+++
・アイブロウ/CHARMANT アイブロウカラー brown
・マスカラ/AINOKI mebuki アイノキ メブキ フォレスト フィール セイバー カールマスカラ 05 天藍
・リップ/UlaUla エッセンシャルリップスティック 03 BENI
・ブラシ/BISOU SAKURA FUDE 212 ハイライター&クリームチークブラシ
※現在販売を終了している商品もあります。
✔︎旅の必需品
「たくさん持たなくても良いオールマイティさ、時短になるものが旅アイテムの基準です。必ず持っていくものはアロマやアロマグッズ。少し浮足だった気分や眠れない時のカームダウンに使います。荷物のパッキングにもおすすめで、ティッシュにアロマを含ませたものをサシェ替わりにして服の間に挟んでおくと旅から帰った後に“洗濯しなくちゃ…”と気分が落ちるようなこともなく、香りが旅の思い出を運んでくれるんです」
(左から)
・uka IZU Shampoo
・uka IZU Conditioner
・Pororocca インティメイトクレンジングオイル(フェムケア)
・グラン・テロワール フィトテッククリーム
・グラン・テロワール フィトテックローション
※すべて本人私物。現在販売を終了している商品もあります。
今回のお宿は…「界 ポロト」

“ポロト湖の懐にひたる、とんがり湯小屋の宿”をコンセプトに北海道の白老町に佇む湯宿。白老温泉の湯は世界的にも希少な太古の植物由来の有機物を含む「モール温泉」。全ての客室が湖に面し、大自然とのつながりを感じながら湯浴みを愉しめる。
住所:北海道白老郡白老町若草町1-1018-94
電話:050-3134-8092(界予約センター)
アクセス:【車】白老ICより約6分、札幌から:札幌北ICより約65分、新千歳空港から:新千歳空港ICより約40分【電車】JR白老駅(北口)より徒歩約10分、札幌方面から:JR札幌駅から北斗12号(函館行)でJR白老駅まで約65分【飛行機】新千歳空港よりレンタカー・タクシーの場合:約40分、電車の場合:JR新千歳空港駅から南千歳駅(約3分)→特急でJR白老駅(約40分)
料金:1泊31,000円〜(2名1室利用時1名あたり、サービス料込、税込、夕朝食つき)
URL:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiporoto/
photograph:Makoto Shamura
design:Atsushi Aihara
text:Ayako Watanabe
edit:kiitos.
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