出典：冬の着こなしをオシャレに彩るいろんな帽子

連載『お洒落さんのためのファッション用語辞典』では、トラッドファッションから最新のファッションまで、FUDGEでおなじみのファッション用語についてわかりやすく解説します。92回目は「ボンネット」のルーツを探ります。この連載を読んでファッション用語の背景や起源を知れば、毎日のお洒落がより楽しくなること間違いなし！

 

【用語解説】まずは「ボンネット」を知ろう。

出典：いま注目の帽子“ボンネット”って知ってる？デニムコーデのアクセントに被ってみて【FUDGE FRIEND おしゃれさんの毎日コーディネート vol.485｜鈴木楽々】

「ボンネット」は帽子の基本形です。本来はやわらかい布やエイト製で頭の後ろから頭頂部を覆うようにぴったりとかぶり、あごの下でリボン状のひもを結ぶ形の帽子のことをさします。

 

【歴史】「ボンネット」を被っていない女性は、きちんとしていないと言われた時代も……

出典：《オーバーライド》のボンネット。アウターのフード感覚でカジュアルに使える！

「ボンネット」とは多くはニット素材の、あるいはほかの素材のものでも、袋状あるいは平面の布を縫い合わせたり折り畳んだりした頭巾のようなスタイルの〈かぶりもの〉のこと。その呼び名もデザインも、フランスで16世紀ごろまで女性用の帽子全般をさしていた「ボネ（「ボンネット」のフランス語読み）」にルーツがあると言われています。

18世紀に入ると「ボンネ」は頭巾のように頭を覆い、両端から伸びるリボン状のひもをあごの下で結ぶスタイルの帽子のことのみを指すようになっていき、それが広く世界じゅうに知られるようになると、英語圏では「ボンネット」と呼ばれるように。その後、19世紀に入ると、デザインは多様化。〈つばあり〉〈つばなし〉〈造花などの装飾をほどこしたもの〉なども登場し、19世紀を通して流行します。現代の「ボンネット」はこの19世紀以降の「ボンネット」の名残りかもしれませんね。

一時、「ボンネット」を着用せずに外出する女性ほどにきちんとした家柄の女性だとみなされた頃もあったようで、大切な衣類のひとつと捉えられてもいました。日本では、欧化政策が進んだ、いわゆる〈鹿鳴館(ろくめいかん)時代〉にバッスルスタイルと共に採用され、明治後半まで用いられたそうです。一方で「ボンネット」はスコットランド地方で男性がかぶっていた布製のふちのない帽子にその名が由来するという説も存在します。

 

【雑学】アメリカのホームドラマ『大草原の小さな家』では女性は皆「ボンネット」を着用。

1970年代から80年代にかけてアメリカで制作され、日本でもテレビ放送されていたドラマ『大草原の小さな家』はご存じでしょうか。最近だと、2019年に4Kリマスター版が再放送され、話題になりました。もともとはローラ・インガルス・ワイルダー作のドラマと同名の自伝的児童書が原作。舞台は西部開拓時代。インガルス一家が、アメリカ中西部を幌馬車で移動しながら、自然を切り開き、ログハウスを建てて暮らす様子が描かれています。広大な草原や動物の姿、家族愛や友情の美しさに多くの日本人も魅了されました。このドラマに登場する女性は大人も子供も皆、「ボンネット」をかぶっているのです。多くはカラフルな花柄のコットン製。時代からすると、端切れを使った手製でしょうか。フリルがあしらわれ、ふっくらと頭部を覆っています。自宅で過ごす以外はいつでも見につけている印象。西部開拓時代は、それがマナーとされていたのかもしれませんね。

 

監修：朝日 真（あさひ しん）

文化服装学院専任教授、専門は西洋服飾史、ファッション文化論。早稲田大学文学部卒業後、文化服装学院服飾研究科にて学ぶ。『もっとも影響力を持つ50人ファッションデザイナー』共同監修。NHK『テレビでフランス語』テキスト「あなたの知らないファッション史」連載。文化出版局『SOEN』他ファッション誌へ寄稿多数。NHK「美の壺」他テレビ出演。

 

illustration_Sakai Maori
edit & text_Koba.A

 

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