FASHION
連載『お洒落さんのためのファッション用語辞典』では、トラッドファッションから最新のファッションまで、FUDGEでおなじみのファッション用語についてわかりやすく解説します。第68回目は「バルマカーン」あるいは「バルマカン」と呼ばれるコートのルーツを探ります。この連載を読んでファッション用語の背景や起源を知れば、毎日のお洒落がより楽しくなること間違いなし!
【用語解説】まずは「バルマカーン」を知ろう。
「バルマカーン」、正しくは「バルマカン」は、「ラグラン袖で前開きが比翼仕立て(フライフロント)、小さめのコンバーチブルカラーがついたゆったりとしたシルエットのコートのことをいいます。コンバーチブルカラーは、第一ボタンをはずしても留めても着られます。メンズオーバーコートの基本形のひとつで、コットンギャバジンやツイードのものもあります。
【歴史】荒野で狩猟の際に着ていたコートだった?!
「バルマカーン」「バルマカン」という名は、スコットランド・インバネス近くの地名、バルマカーン(balmacaan)にちなんでいます。もともとは強い雨や風から身を守り、防寒具にもなるレインコートで、はじめは荒野で鳥を撃つ際に重宝されたとか、軍用コートから派生して誕生したといった説があります。
【雑学】「バルマカン」のラフな着こなしは、スティーブマックイーンにならう。
1960年代~70年代に活躍し、映画『大脱走』や『ゲッタウェイ』ほかで知られるアメリカの俳優、スティーブ・マックイーン。彼は60年代ですでにセルフ・プロデュースにこだわり、自己流な着こなしに長けた俳優でした。「バルマカーン」「バルカマカン」コートを着せても、それは同様。細身のスーツの上にさらりとはおり、フロントボタンは閉めず。コートのルーツ、スコットランドの紳士たちのようにきちんと着るという発想は皆無だったのかもしれません。衿は立てたままで、あくまでラフに着こなすさまは、かっこいいとしか言いようがありません。暖冬で、分厚いコートの前をしっかりと閉めて着るというシーンが少なくなりそうな今年。彼の着こなしが参考になるかもしれませんよ。
監修:朝日 真(あさひ しん)
文化服装学院専任教授、専門は西洋服飾史、ファッション文化論。早稲田大学文学部卒業後、文化服装学院服飾研究科にて学ぶ。『もっとも影響力を持つ50人ファッションデザイナー』共同監修。NHK『テレビでフランス語』テキスト「あなたの知らないファッション史」連載。文化出版局『SOEN』他ファッション誌へ寄稿多数。NHK「美の壺」他テレビ出演。
illustration_Sakai Maori
edit & text_Koba.A
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