FASHION

FUDGEお馴染みの着こなしやアイテムを”ディグる(深掘りする)”新たな特集連載【FUDGE dig.】。スコットランド・フェア島が発祥の幾何学模様のジャガード編み「フェアアイルニット」が4回目のテーマ。

今回は「もの作りの場を訪ねて」と題して、《NARU FACTORY》のフェアアイルニットがどのように作られているのか?工場取材を通して深掘りしていきます!

何度も微調整してできた《NARU FACTORY》のフェアアイルニット

ニットの産地として有名な、大阪・泉大津市で素材開発からデザイン、生産、縫製まで自社工場で一貫してもの作りに取り組む《NARU FACTORY》。創業から70年以上経つ、老舗メーカー「南出メリヤス」のブランド。

自社の編み機で熟練の職人によって丁寧に作りあげたフェアアイルニットは、何度も完成サンプルを微調整するなど試行錯誤を重ねて、現在のデザインに辿り着きました。そのこだわりを深掘りするべく、ブランドを統括する、「南出メリヤス」専務の南出仁嗣さんに11個の質問に答えてもらいました。

 

Q1:まずは《NARU FACTORY》というブランド名の由来を教えてください

南出:《NARU FACTORY》という名前は漢字の「成」に由来します。「成」という言葉には物事が自然と達成される、つながりを生むという意味があります。ブランドコンセプトである「心を豊かにする服」を体現し、お客様の日常が輝き自然と笑みがこぼれる場をつくっていきたいという想いが込められています。

 

Q2:フェアアイルを自社で作ろうと思ったきっかけは何ですか?

南出:大阪・泉州のニット産地は、シンプルで実用的な日常着のニットを得意としてきました。私たちもそうしたものづくりの流れの中で培ってきた強みがあります。

ですが、そこに「温かみ」と「楽しさ」をプラスしたらどうなるだろう、と考えたのが出発点です。フェアアイルは、見ているだけで心が弾むような柄の面白さがあります。色や模様が連なり、まるで物語を編み込んだような表情が出る。その要素を、日本の工場で、私たちらしい解釈で作り直したら、もっと身近で、もっと心が豊かになるニットが作れるのではないかと思いました。

 

まずは手書きでデザインをおこすことが多いそう。

Q3:フェアアイルニットのデザインはどこからイメージしていますか?

南出:デザインは、伝統的な模様の資料を研究しつつ、街の風景や自然の色合い、NARUの過去の柄データなどからヒントを得ています。例えば今シーズンのフェアアイル柄は2026年ハートウォーミングというテーマにちなんで
ほっこりと心温まるような糸と色合いでつくっており。大き目の柄を胸元に持ってくることで他にはないユニークなフェアアイル柄に仕上げました。

 

自社のニット工場。常時稼動しており、フェアアイルニットを一着編むのに3時間ほど費やしている。

Q4:《NARU FACTORY》らしいフェアアイルニットのこだわりは何ですか?

南出:本場のフェアアイルは厚手で重いことが多いのですが、私たちは日本の気候やライフスタイルに合わせ、軽くて柔らかく、扱いやすい風合いを重視しました。重さやゴワつきより、日常に溶け込む着心地を追求しています。

そして柄の美しさと着やすさ、その両立を大事にしています。伝統を尊重しつつ、現代の暮らしにフィットする服であることが欠かせません。

 

Q5:制作していく過程で楽しいこと・難しいことを教えてください

南出:フェアアイルニットはジャガード編みなので、どんな柄の仕様にするかなど考えて、それが形になっていくのはとても楽しいですね。前と後身頃、両袖の4パターンの柄組が必要なので、編み上がった時の達成感はなかなかのものです。ただ、色数が多いぶん糸のセットや調整には苦労も多いです。

 

国内外から集められた糸は、デザインや風合いなどに合わせて、どれを採用するか決められる。

Q6:ニットの要である、糸選びについてこだわりはありますか?

南出:《NARU FACTORY》の定番である「タスマニアラムウール」をはじめ、日本で糸づくりから取り組むリシェスの糸も採用しています。どちらも柔らかく、長く着られる安心感があります。ニットに合わせて、肌ざわり、発色、耐久性……その三点のバランスを吟味して糸を選んでいます。

 

手書きでデザインしたものを専用のブラウザで、どのように編むか機械に指示をだすために柄組を行っていく。

 

プログラミングしたものが編まれている様子。ジャガード編みは前と後身頃、両腕と4パターンデザインを考えるため、編み地の完成まで3日間ほどかかる。

Q7:デザインを左右する、柄出し、柄組について教えてください

大きさのバランス、柄の繰り返しのリズム感、色合い、空白部分と柄部分の間など。これらの調和がとても重要です。派手すぎず、地味すぎず。見た時に面白いなと思う柄出しを行っています。

柄の出方は、実際に編んでみて調整することが多いです。図案だけでなく、編地になったときにどう見えるかを確認しながら決定します。1つのデザインに対して、3日ほどかけて、完成サンプルを何度も見直して調整するのが私たちのやり方です。

 

Q8:シルエットのこだわりはありますか?

シーズンによってシルエットは変化するのがNARUのフェアアイルの面白い所です。着やすさを大切に、裾にスリットを入れたり、ワイドシルエットデザインにしたりなどしています。

 

Q9:定番で使うモチーフや今季のデザインについて教えてください

フェアアイルらしい「雪の結晶」や「クロス」柄はよく使います。ただしそのままではなく、NARUらしい解釈でサイズや配置をアレンジしています。

今季は「ハートウォーミング」をテーマに、心がほっと温まるような色合いや柄を選びました。胸元には大きめの雪柄を配置し、存在感とインパクトを持たせています。さらに、素材にはNARU定番のタスマニアラムウールを使用しました。やわらかくて温もりのある風合いが、柄の可愛らしさと響き合い、冬の装いをやさしく包み込む一枚に仕上がりました。

 

自社の工場内でも、最終、熟練の職人によって仕上がりをチェックして、必要があればその場で修正作業が行われている。

Q10:「南出メリヤス」の強みと「大阪・泉大津市」という場所について

経験豊富な熟練工と泉州というニットの産地としての細やかな動きが出来る事です。またローゲージからハイゲージまですべてのゲージに対応できることも強みです。

また大阪・泉大津はニットの産地としての蓄積があります。原料や資材の調達がしやすいこと、熟練の職人や家内工業的な各工程の職人が近くにいる事、そうした地域の土壌がものづくりを支えています。

 

同じ敷地内にあるカットソー・布帛の工場。

 

カットソー・布帛の工場内では、生地の裁断、縫製、仕上げ、検品、梱包まですべて自社で行なっている。

また泉大津は「毛布のまち」としても知られるほど、繊維の文化が根付いた土地です。私にとっては、歴史の重みと人のあたたかさを同時に感じられる場所。ものづくりに必要な環境と、文化的な誇りを持ち合わせた地域です。

 

自社のニット工場。事務所も併設しており、職人と企画のデザインチームは同じ場所でもの作りをしている。

Q11:《NARU FACTORY》の今後について

《NARU FACTORY》はこれからも「心が豊かになる服」をテーマに、日本製ファクトリーブランドとして進化を続けます。伝統を大切にしながら、新しい感性や時代に合う表現を取り入れていきたい。そして、国内外のお客様に“日本で作る価値”を伝えていくことが、これからの私たちの使命だと考えています。

 

《NARU FACTORY》のフェアアイルニットをチェックしよう!

(左上、右上)リシェスフェアアイル柄ニット¥16940、リシェス フェアアイル柄 ニットベスト¥15400/ともにNARU FACTRY(南出メリヤス)

ヴィンテージ感のあるデザインに、国内産のリシェス糸で編まれたクルーネックセーターとベスト。柔らかく、起毛感があり保温性に富んだ素材で編まれている。

(下)タスマニアラム フェアアイルニット¥20900/NARU FACTRY(南出メリヤス)

大胆な柄の配置がオリジナリティあるデザイン。オーストラリア・タスマニア島の厳しい自然環境で育まれた上質なラムウールを使用しており、ふっくらやわらかい温かみのある風合いに仕上げている。

 

問い合わせ

南出メリヤス tel:0725-33-9114

▶︎オンラインストア

 

\リール動画でもディグってます🧶/

photograph_Wacci(Interview),Kojima Yohei(model)
text&edit_Takehara Shizuka

 

 

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