CULTURE & LIFE

今週、来週の《火曜日のプレイリスト》は特別版!

先日、待望の新作アルバム『燦々』が発売となった、いま注目のシンガー・ソングライター、カネコアヤノのインタビューを2回に渡りお届け!1回目となる今回は新作『燦々』に挑んだ気持ち、大切にしている”言葉”について……。お見逃しなく!

 

 

日々の暮らしのなかで、ふと訪れるささやかな喜びやワクワクする気持ち。そんなかげがえのない瞬間を力強いバンド・サウンドに乗せて歌うシンガー・ソングライター、カネコアヤノ。

自主制作盤が次々とソールドアウトとなり、昨年リリースしたアルバム『祝祭』が様々なメディアで絶賛されるなかで、待望の新作『燦々』が完成した。前作同様、林宏敏(ギター)、本村拓磨(ベース)、ボブ(ドラム)というカネコアヤノが信頼をおくバンド・メンバーがサポート。前作以上にバラエティ豊かで、聴けば聴くほど心に響くアルバムに仕上がった。

そこで『火曜日のプレイリスト』特別企画として、今週と来週の2回に渡ってカネコアヤノのインタビューをお届け!新作の魅力、そして、彼女が大切にしている「言葉」について訊いた。

 

音が鳴っているけど、そこに余白があるアルバム

ー新作『燦々』には、どんな気持ちで挑んだのでしょうか。

「前作『祝祭』では、今のバンド・メンバーが揃って、自分が何をしたいのか、自分にとって音楽がどういう存在なのか、改めて考えることができたんです。その気持ちを大切にしながら衝動的に作ったところがあったんですけど、『燦々』はバンド・メンバーと1年半一緒に活動をしてきたこともあって、ゆっくり時間をかけて丁寧に作ろうと思いました」

 

ーアルバムについて考える時間がたっぷりあったんですね。

「『祝祭』の時は曲がどういう風に着地したいのか考えずに進めていたところがあって、レコーディングの日にアレンジする曲もあったんですけど、今回はエンジニアの方も含めて、曲をどうしたいのかイメージを共有して、レコーディングの日にやることが全部決まってたんです。あと、レコーディング前にみんなで話したのは〈音が鳴っているけど、そこに余白があって、それがきれいに聞こえるアルバムになればいいね〉っていうことでした」

 

 

ー曲ごとにアレンジに工夫がこらされていて、バラエティ豊かなアルバムですね。

「そうですね。メンバーが私より音楽に詳しいので、アレンジとか音作りに関してはメンバーに頼りました。このメンバーとやれて良かったと思います。曲のイメージを伝える時、私はすごく抽象的で、〈この曲は山っぽいんですよ〉とか〈ジャングルなんです〉とか言っても、みんなわかってくれる。それがありがたくて」

 

ー「山」といっても、人によってはイメージする山が違いますもんね。

「そうそう。だから〈寒い山なんです〉とか、もう少しイメージを伝えたりするんです。メンバーもそんな感じで、ベースの本村君とか〈この曲にはメリーゴーランドが入ってたほうが良いと思う〉とか言ってたりして」

 

 

ーそういうイメージのやりとりが出来るのは、メンバーがカネコさんのことや歌の世界を理解しているからですね。

「ありがたいことに、みんな歌に寄り添ってくれる人達ばかりなんです。そうじゃないと難しいと思いますね」

 

ーバンドの演奏がカネコさんと一緒に歌ってるみたいで、メンバーがカネコさんの歌を愛しているのがすごく伝わってきます。

「そうだったら良いなあって思います。ドラムのボブとかライヴ中に本当に歌ってるんですよ。ライヴで歌詞を少しでも間違えると、すぐメンバーに気付かれるんです。〈最近、あそこよく間違えるね〉って。だから歌詞に寄り添ってくれてるんだなあって実感します」

 

 

応援歌は苦手だけど、〈頑張れ!〉も〈大丈夫〉も言われたい

ーカネコさんの歌は歌詞が印象的ですもんね。『愛のままを』に「お守りみたいな言葉があって」というフレーズが出てきますが、言葉の力は信じてます?

「はい。過剰に信じてます。歌詞とはちょっと違う話ですけど、たとえば〈~~したい〉じゃなくて、〈~~する〉って言い切ることが大切だと思っていて。そうやって自分の気持ちをはっきりさせていたら、やりたいと思っていたことがいつか実現すると思うんです」

 

ー思うだけじゃなくて、言葉にすることで現実感が増す気がしますね。

「逆もあると思うんです。最近、羨ましいことを〈ずるい〉って言うじゃないですか。〈ずるい〉って言い続けてたら、だんだん、他人を恨むような人間になっていくような気がして。私は基本的にネガティヴでいつも不安なんですけど、そういう歌を歌っていたら、どんどんそうなっちゃう。だから最初は暗くても、最後は明るく終われる曲にするようにしているんです。そういう曲を歌っていたら、きっと自分もそうなるんじゃないかと思って」

 

 

ー『燦々』はそういうアルバムですね、いろいろ不安な世の中だけど前を向いて生きて行こうと思える。でも、応援ソングみたいな押し付けがましさがないのが良いですね。

「応援の仕方ってあると思うんですよ。私は応援歌は苦手だけど、〈頑張れ!〉も〈大丈夫〉も言われたいから、頑張れの言い方をずっと考えているのかもしれないですね」

 

》》》次回は彼女が歌い続ける理由とは?子供の頃から好きだった音楽について。10月22日(火)公開です!

》》》以前紹介した、『燦々』のレビューはこちら!

 

カネコアヤノ『燦々』

 

photograh_Osada Kasumi

《カネコアヤノ》シンガー・ソングライター。弾き語りとバンド形態でライブ活動も展開中。2016年4月には初の弾き語り作品『hug』を発表、その後、続々と新作をリリース。2016年以降、新たなメンバーと大胆なバンドサウンドを展開し注目を集め、着実にファン層を広げていた中、2018年に発表したアルバム『祝祭』が多くの著名人やリスナーの年間ベストアルバムに選ばれる。さらにCDショップ大賞入賞作品にも選出されて、新たな日本のロックシーンの流れを象徴するアルバムとしてロングセールス中。1年半ぶりの新作アルバム『燦々(さんさん)』が発売中!「光の方へ」は11月公開の映画『わたしは光をにぎっている』の主題歌として書き下ろした楽曲。

text_Murao Yasuo

design_Koinuma Kenichi

edit_Takehara Shizuka

 

 

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