CULTURE & LIFE
隔週にてアーティストに登場いただき、「インタビュー」、「プレイリスト」、ファッションの「マイ・ルール」をお届けする、連載《火曜日のプレイリスト》。
今回は同じ大学の音楽サークルで出会った4ピースバンド・Homecomings(ホームカミングス)のヴォーカル・ギターを担当する、畳野彩加さんのインタビューをお届け!
2019年に公開された大ヒット映画「愛がなんだ」の主題歌を担当するなど、活躍の場を広げている彼らが、2021年4月についにメジャーデビュー。今回は通算4枚目となるアルバム『Moving Days』についてや、結成に至るまでの経緯、甘酸っぱい青春の想い出から現在進行形までお届けします。
京都で結成された男女4人組バンド、Homecomings(ホームカミングス)。同じ大学の音楽サークルで知り合った4人は、USインディーやギター・ポップに影響を受けたフレンドリーなポップ・センスが注目を集めて、京都のインディー・シーンを代表する存在に成長。大学を卒業した4人はマイペースに活動を続けてきたが、関東に拠点を移してメジャー・デビューを飾ることに。バラエティ豊かなサウンドでバンドの新境地を開いた新作『Moving Days』は、新しい街での新しい生活の始まりを告げるようなアルバムだ。ヴォーカル/ギターの畳野彩加にこれまでのこと、そして、新作について話を聞いた。
ーー高1の時に、同級生で今一緒にHomecomingsをやっている福富くん(ギターの福富優樹)が出場した音楽コンテストを見に行ったのが、バンドに目覚めたきっかけだそうですね。
「地元のコンテストで福富くんのバンドが演奏するのを見て、なんか楽しそうだな、と思ったんです。子供の頃からピアノを習っていたり、合唱団に入っていたりしたんですけど、バンドには興味なくて部活はバレー部だったんです。でも、ライヴを見てからバンドがやりたくなって、すぐバレー部をやめて、ギターの教則本を買って家でギターの練習を始めたんです」
ーー路上ライヴをやったこともあったとか。畳野さんの出身は石川県ですよね。地方の町で路上ライヴをやるのは勇気がいりませんでした?
「ギターの練習を始めてから何ヶ月か後に大会に出ることになって。それで人前で歌うのに慣れたくて、駅前の駐輪場で路上ライヴをやったんです。当時は映画館もない田舎町で駅前といっても全然人がいないんですけど、福富くんとか友達が見にきてくれて。今やれって言われてもできないかもしれないけど、当時はそれがすごく楽しかったんです」
ーーそして、福富くんと同じ京都の大学に進学して、大学の音楽サークルでHomecomingsを結成することになるわけですね。
「偶然、同じ大学になったんです。リズム隊の2人(ベースの福田穂那美、ドラムの石田成美)はひとつ上の先輩で、4人それぞれ別のバンドもやってたんです。でも、そのうち学校の外でライヴをする機会が増えていって、フジロックの話がきたりもしたので、このバンドはやめちゃいけないなって思うようになりました」
ーーデビュー当時、Homecomingsは「京都の学生バンド」として注目を集めたこともあって、京都のイメージが強いのですが、京都は住んで見ていかがでした?
「自転車で街の端から端まで行けるんですよね。でも、大学が多いのでカルチャー色がすごく強くて、面白い本屋さんとか、ライヴハウスやミニシアターがいっぱいある。すごく刺激的な街でした」
ーー大学卒業後も京都を拠点に活動しますが、卒業する時に就職かバンドかで悩んだりはしませんでした?
「私たちが入っていたサークルでは、みんな学校を卒業する時にバンドを辞めるんです。だからリズム隊の2人が卒業する時にバンドをやめるという話が出たんですけど、私と福富くんで説得して。私はこの4人でバンドを続けていけたら、それだけでいいと思っていました。私は〈どうにかなる〉って思って先のことを考えずに行動するタイプなので(笑)」
ーーそして、4人がそれぞれの事情で関東に移んでメジャー・デビューすることになったわけですが、気持ちのうえで何か変化はありますか?
「これまでと変わらないですね。この4人でバンドを続けて行きたい。そのためにはメジャー・デビューするのは必要なことだったのかなって思います。もちろん、メジャー・デビューは夢のひとつだったけど、それが目標だったわけではなくて、段階のひとつだと思っています」
ーーメジャー・デビュー作になった新作『Moving Days』はこれまで以上にバラエティ豊かなアルバムになりましたね。バンド・サウンドにこだわらずに、自由に作っているような印象を受けました。
「これまでは4人がスタジオに集まって、その場で音を出しながら作っていたんです。今回はコロナの影響であまりスタジオに入れなかったので、デモをもとにメンバーそれぞれが家で考えて曲を作り上げていきました。家だと時間がたっぷりあるので曲を客観的に聴けるし、いろんなアイデアが浮かぶんですよね。これまでは作詞をしている福富くんや、曲を書いている私の意見が強く出てしまって、ちょっとバランスが悪いところもあったんです。でも、今回は私が書いたデモに対してリズム隊の2人の意見も加わって、いろんなアイデアを曲に活かせることができたのは大きかったですね」
ーー歌詞にはLGBTのこととか、今の社会問題のことを盛り込んだそうですね。
「アルバムの制作に入る前に話していたのは、4人が引っ越したので新しい街について歌う、ということと、今の社会や生活について感じていることを発信していくということでした。コロナで自粛している間にいろんなニュースを聞いて、それで落ち込んだりすることが結構あって。そういう話をメンバーの間でよくしていたんです。あと、私たちが好きな海外のインディー映画や配信ドラマで、ジェンダーとか社会問題を扱う作品が多くなってきたことからも刺激を受けました。それを自分たちなりの解釈で歌っていこうと思ったんです」
ーーストレートにメッセージを伝えるのではなく、自分たちなりの表現の仕方で歌詞に盛り込んでいるのがHomecomingsらしいですね。
「そこは福富くんの才能ですね。今回は福富くんの歌詞を大切にしたくて、すべての曲を歌詞から先に作って、歌詞にあったメロディーのパターンを5~6通り考えました。曲作りはこれまでいちばん時間をかけましたね」
ーー映画やドラマから刺激を受けた、ということですが、バンドのサイトにはアルバムのセルフライナーノーツが掲載されていて、そこでアルバムに影響を与えた映画や小説、コミックなどいろんな作品が紹介されています。音楽を介していろんなカルチャーと繋がっているのも、Homecomingsの特徴ですね。
「私は好きなバンドが影響を受けたものを知りたいタイプなんです。他のメンバーもそうで、自分たちが影響を受けたものや好きなものをみんなに伝えたい。それを知ってもらえることで、自分たちの曲をもっと楽しんでもらえると思うんです」
——なかでも映画はHomecomingsにとって重要なカルチャーですね。新作には映画『愛がなんだ』の主題歌「Cakes」のアルバム・ヴァージョンが入っていますが、Homecomingsの曲は歌詞やサウンドも映画的です。
「みんな映画が好きなので、映画の曲を書くのは自分たちにとって特別なことで、すごく楽しいんですよね。ライヴ以外に映画を自主上映する『New Neighbors』というイベントをこれまでやってきて、こっちに来てからも一回やったんです。その時は『ゴーストワールド』を上映したんですけど、上映の権利が切れていたので自分たちで新しい字幕をつけたんです。「New Neighbors」はこれからも続けて行きたいし、いつか地方でもやってみたいですね」
Homecomings『Moving Days』発売中!
きらめくようなメロディーが弾けるギター・ポップなサウンドに、ソウルの要素が加わったことで躍動感アップ。さらにエレクトロニックな曲、ストリングスを加えた曲、インストゥルメンタルなど、バラエティ豊かになった曲からは、どんなサウンドをやっても自分たちの音になる、という自信を感じさせる。風景や物語が浮かび上がる歌詞も魅力的で、どの曲も映画のワンシーンのよう。バンドのサイトに掲載されたセルフライナーノーツを読めば、いろんなカルチャーから影響を受けたHomecomingsの世界に触れられるはず。
photograh_Osada Kasumi
《Homecomings 》畳 彩加(Vo./Gt.) 、福田穂美(Ba. / Cho) 、石田成美(Dr./Cho)、福富優樹(Gt.)からなる4ピースバンド。これまで4枚のアルバムをリリースし、台湾やイギリスなどでの海外ツアーや、4度に渡る「FUJI ROCK FESTIVAL」への出演など、2012年の結成から精力的に活動を展開。心地よいメロディに、日常のなかにある細やかな描写を紡ぐような歌詞が色を添え、耽美でどこか懐かしさを感じさせる歌声が聞く人の耳に寄り添う音楽で支持を広げている。2021年春、ポニーキャニオン内のOfficial 男dismを始めとするアーティストが所属する新レーベルIRORI Recordsよりメジャーデビュー!5月に通算4枚目となるアルバム「Moving Days」をリリース。本作には江口のりこ主演・テレビ東京系ドラマ25「ソロ活女子のススメ」のエンディングテーマ「Herge(エルジェ)」の他、2019年4月公開の大ヒット映画「愛がなんだ」主題歌「Cakes」のアルバムバージョンや、「すき家」CMソング「Pedal」など全11曲が収録。7月にはアルバム発売を記念して、東京、名古屋、大阪にてワンマンツアー“Tour Moving Days”を開催。https://homecomings.jp/
text_Murao Yasuo
design_Koinuma Kenichi
edit_Takehara Shizuka
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