CULTURE & LIFE
「今まででいちばんやりたかった役!」と女優の夏帆が挑んだのは、いつもまわりに毒づいてばかりのヒネクレ者のCMディレクター、砂田。おばあちゃんのお見舞いに行くため、砂田は親友の清浦を連れて、大嫌いな故郷に向かう。
映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』は、いつの間にか大人になっていたヒロインが、子供の頃の自分と再び向かい合う物語。そこで夏帆と絶妙のバディぶりを見せたのが、韓国出身のシム・ウンギョン。夏帆が初めて等身大の自分をさらけだし、シム・ウンギョンは不思議なキャラクターで存在感を発揮する。そんな二人が久し振りに再会。映画のこと、そして、子供時代のことを語ってくれた。
ーー夏帆さんが演じた砂田、ウンギョンさんが演じた清浦。それぞれに魅力的なキャラクターでしたが、演じてみていかがでした?
夏帆「砂田はほっとけないというか、〈砂田って、この先、大丈夫なのかな?〉って現場でよく話してたんです(笑)。この話が終わった後、ちゃんと生きていけるのかなって。すごい不器用だし、余計なひと言が多いし、ほんとに生きづらいんだろうなと思って。だからこそ、私はすごく共感したんですけど」
ーーずっと空回りしてますよね。
夏帆「そう、空回ってるし、滑り倒してるし。それでも、仕事はちゃんとやってる。すごい人間くさいキャラクターだと思いました。
ーー清浦はいかがでした?
ウンギョン「清浦は明るくて、砂田を笑わせるのが大好き。でも、あんまり笑ってくれないんですよね、砂田は(笑)。芝居をしながら感じたことなんですけど、清浦って切ない感情がありますよね。ただ明るいだけじゃない。そういうところも含めて魅力的なキャラクターだと思いました」
夏帆「清浦って、砂田が〈こういうふうに生きたい!〉って子供の頃から思っていたようなキャラクターだと思いました。だから、二人のコントラストが観てて面白い」
ーーそうですね。砂田と清浦の不思議な関係が物語の中心になっていて、夏帆さんとウンギョンさんの息が合った共演が最高でした。良い関係を作るために、二人で何か準備したことはありますか?
夏帆「一度お茶したよね」
ウンギョン「はい。ランチもしました。撮影に入る前に、スタジオでいくつかのシーンのリハーサルもやりました」
夏帆「やったね。今回は撮影日数が11日っていう短い期間だったので、ちゃんと準備して現場に挑んだんです。でも、喫茶店のシーンはすごく難しかった」
ーーはじめて清浦が登場するシーンですね。
ウンギョン「突然登場するから、どうやったら違和感なく自然に登場できるのか、すごく悩みました。夏帆さんも難しかったですか?」
夏帆「うん。いくらリハーサルを重ねても、実際に衣装を着て、メイクして、カメラまわって……っていう環境だと、また変わったりするんですよね。それにウンギョンちゃんと初めて共演するシーンだったんで、テンポがどんな感じかとか、どんな風に受けて返すのかとか、まだわからなかったし。楽しかったけど難しかったな」
ウンギョン「実は私、監督から〈夏帆さんにアドリブをバンバン投げてほしい〉って秘密のミッションを受けていて。監督は夏帆さんの自然な反応を引き出したかったみたいですけど、夏帆さんは困ったんじゃないかと思います。今さらですが、すみませんでした(笑)」
夏帆「いえいえ(笑)。正直、最初はちょっと戸惑ったところもあったんですけど、ウンギョンちゃんがやるアドリブは全部面白いからすごい楽しかったです」
ーー箱田優子監督のコメントによると、砂田のキャラクターには、監督自身のキャラと夏帆さんのキャラも混じっているそうです。ウンギョンさんから見て、砂田と夏帆さんとどんなところが似ていると思いますか?
ウンギョン「夏帆さんは、たまに何を考えているのかわからない表情をするんです。砂田も清浦から見ると〈今なにを考えてるのかな?〉と思う瞬間があって。そういう表情が、ちょっと似てる気がしました」
夏帆「何も考えてないよ、そういう時は(笑)」
ウンギョン「そうでしたか!(笑)」
ーー夏帆さんから見て、ウンギョンさんと清浦とでは似ているところはありましたか?
夏帆「私、一人のシーンだとすごく心細いんです。でも、ウンギョンちゃんが現場にいる安心するというか、ホッとする。今回の撮影で、私の心の寄りどころはウンギョンちゃんだったんです。そういうところは、砂田と清浦の関係に近い気がしますね」
ーー映画のなかで清浦がよく「大丈夫っすよ!」って砂田に声をかけますけど、あのひと言を聞くと、本当に大丈夫な気がしますね。
夏帆「そうですよね。ちょっと救われた気がするというか」
ーーこの物語には、子供の自分に別れを告げるというテーマもありましたが、お二人はどんな子供だったのでしょう。
ウンギョン「すごく人見知りで、人の目を見て話すことができなかったんです。ずっと下を向いてました。親はそんな私が心配で〈演技の学校へ通ったらよくなるかもしれない〉と思ったんです。それで親に勧められて演技の学校に通ったんですが、それが今の仕事をするきっかけになりました」
ーー演技を学び始めた頃、知らない人たちの前で演技をするのは大変でした?
ウンギョン「最初の頃、学校で〈ステージの上で自己紹介をやって〉って言われたんですけど、〈私、無理です〉って出来なくて。でも、台本をもらってやってみたら出来たんです。役に入り込むのがすごく楽しかった。〈続けてやりたい!〉と思ったのは芝居が初めてでした」
ーー夏帆さんはどんな女の子だったんですか?
夏帆「私もすごい人見知りで内向的でした。さっきの話じゃないですけど、〈あなたは何を考えているのかわからない子だった〉って言われますね」
ーー感情が外に出るタイプじゃなかったんですね。
夏帆「そうですね。突然泣き始めたり、かと思ったら癇癪を起こしたり。あと、みんなの輪の中に入って行くのがすごく苦手な子でした。それは自分でもよく憶えてます」
ーーウンギョンさんのように、お芝居をすることで、その内向的な性格が変わっていったのでしょうか。
夏帆「私の場合は、芝居の影響というよりは、単純に大人になったっていうことなのかもしれないですね。経験を積んで、それなりに人とコミュニケーションをとれるようになったというか」
ーーそのほかに、〈大人になったな〉って感じることはありますか。
夏帆「うーん。あまりないですね。人の目を見て話せるようになったくらいかな。最近は、どんどん子供っぽくなっていくような気がして。10代の頃のほうがしっかりしてたんじゃないかって思うこともあります」
ーーウンギョンさんはいかがですか?
ウンギョン「私も夏帆さんと同じかも。子供の頃とそんなに変わってなくて、今も人見知りのところもあるし。ある日、一人で道を歩いていたら、突然〈ああ、私もう25歳だな。もう大人だな〉って思って切なくなったことがありました。気持ちは18歳の頃のままなのに」
夏帆「私も今も自分は18歳ぐらいだと思ってる」
ーーお二人とも気持ちは18歳なんですね。
夏帆「あ、18歳はちょっと言い過ぎたかも(笑)。だって、私はもう28だから、いつまでも18だと思ってたらヤバいですね」
ーーみんな心の中に10代の自分がいるのかもしれないですね。では最後に、映画をご覧になった感想を教えてください。
ウンギョン「面白かったです。自分が出てる映画を、こんなに面白く観たのは久しぶりかもしれないです。もちろん、これまでも面白く感じた映画はありましたが、『ブルーアワー』は撮影現場も面白くて幸せな想い出ばかりでした。やっぱり夏帆さんとのケミストリーですね。映画から二人のテンションがすごく伝わってきて、それがこの作品の良いところだと思います」
夏帆「私もこの映画は大好きです。思い入れが強いっていうのもあるんですけど、それを抜きにして、ひとつの作品として客観的に見ても面白い。でも、初めて完成した作品を観た時は〈これが今の等身大の私か……〉と思って、ちょっと落ち込んだんです。良いところも見たくないところも全部見せられた気がして、ものすごく落ち込んで、そのまま新宿に出掛けて街を徘徊していたんです」
ウンギョン「えーっ。新宿で何してたんですか?」
夏帆「気分転換に新宿で映画を観ようと思って。だけど、結果、何も観れなくて、30分ぐらい新宿をうろうろして家に帰る、みたいな。でも、2回目に観た時は〈あ、面白い! この映画〉って思いました。1回目はどうしても自分のことを見てしまうけど、2回目は客観的に観られるんですよね。そういえば、この前、ニューヨークで一緒に観たよね。それがこの映画を観た3回目でした」
ウンギョン「ニューヨークでは、お客さんの反応がすごく良くて。〈どうだろう? あ、私が出た! 笑うかな……?〉ってドキドキして見てたら、みんな〈ワッハッハッハ〉って笑ってくれました」
夏帆「1回目は落ち込んだけど、3回目はすごく幸せな気持ちで観ることができました。ウンギョンちゃんもいたしね(笑)」
ウンギョン「良かったですー(笑)」

Kaho:ニットドレス¥58000、中に着たシャツ¥32000、プリーツスカート¥38000 すべてオーラリー(TEL:03-6427-7141)
EunKyung Shim:バーガンディ アップサイクル ニット¥97000、ブラック ハイライズ スキニー¥64000 STELLA McCARTNEY(ステラ マッカートニー カスタマーサービス TEL:03-4579-6139)
photograph_Kobayashi Mariko
styling_Shimizu Naomi (Kaho), Babymix (EunKyung Shim)
hair&make-up_Ishikawa Naoki (Kaho)
hair_shuco (EunKyung Shim),make-up_AKIKO SAKAMOTO(EunKyung Shim)
interview & text_Murao Yasuo

©2019「ブルーアワーにぶっ飛ばす」製作委員会
映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』
公開日:2019年10月11日(金)
テアトル新宿、ユーロスペースほか全国ロードショー
監督・脚本:箱田優子
キャスト:夏帆、シム・ウンギョン/渡辺大知/黒田大輔/上杉美風/小野敦子/嶋田久作/伊藤沙莉/高山のえみ/ユースケ・サンタマリア/でんでん/南 果歩
2019年、日本映画 92分
配給:ビターズ・エンド
WEB:www.blue-hour.jp
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