CULTURE & LIFE
映画「愛がなんだ」のヒロインを演じて大きな注目を集めた女優、岸井ゆきの。映画、テレビ、舞台と幅広く活動するなか、最新主演映画『やがて海へと届く』は大切な友達を失った女性の物語だ。岸井が演じる真奈は、大学ですみれという女の子に出会う。内気で周りに溶け込めない真奈と反対に、すみれは自由奔放でどこかミステリアス。二人は正反対の性格だけど気があった。でも、すみれは一人旅に出たまま行方不明に。すみれが残したビデオカメラには、二人が過ごした大切な時間と真奈が知らなかった彼女の気持ちが記録されていた。
二人の女性の絆を繊細なタッチで描いた本作を、岸井はどう感じたのか。一緒にいる事でパワーをくれる親友、そして、大好きな旅についても話を聞いた。
Index
- 1 大切な思い出は肌身離さず持っていたい
- 2 すみれと真奈には”特別な言語”がある
- 2.1 ——すみれと真奈は不思議な絆で結ばれていましたが、岸井さんは二人の関係をどんな風に捉えていました?
- 2.2 ——真奈にとってすみれと過ごす時間は特別な時間だったんですね。
- 2.3 ——真奈はすみれのどんなところ憧れていたんだと思いますか?
- 2.4 ——二人の関係は人によって捉え方は変わるかもしれませんがね。岸井さんにとって親友はどんな存在ですか?
- 2.5 ——それは真奈とすみれのように共通言語があるということですよね。
- 2.6 ——辛い時に愚痴を聞いてくれる、というのとは、ちょっと違う感じですね。
- 2.7 ——一緒に気持ちを整理してくれる、というのは心強い存在ですね。すみれと真奈が一緒にいるシーンで印象に残っているものはありますか?
- 3 海外旅行は一人で行く派
- 4 顔から始まる映画が好き
大切な思い出は肌身離さず持っていたい
——今回、真奈というヒロインを演じて、どんな印象を持ちました?
「彼女はすみれとの大切な思い出を12年間、肌身離さず持ち続けているじゃないですか。そういうところは自分にもあるんですよね。私は憶えていたいことしか憶えてないんですけど、多分、真奈もそうだと思います。嫌なことは忘れて、大事な思い出だけ持って生きている。そういう共感した部分を頼りにして彼女を演じました」
——中川龍太郎監督とは役作りや物語について何か話をされたのでしょうか?
「中川監督は大切な人を亡くした経験があるんです。その時に感じたことをいろいろ話してくれました。あと、〈すみれの壁を愛してくれ〉って言われたんです」
——「壁」ですか?
「中川監督は〈人の壁が好きだ〉って言うんですよ。〈壁を感じる時に、その人の魅力が見える〉って。中川監督の言葉って抽象的なことが多くて解読するのに時間がかかるんですよね。〈壁ってどういうことなんだろう?〉って、毎日考えていました」
——答えは出ました?
「誰にでも人に隠してる部分とか、自分を守っている部分あるじゃないですか。それが〈壁〉だと思うんですよね。でも、〈壁〉が何かを突き詰めるより、〈そうだな、人には壁があるよな〉ということを、いつも考えていた感じです。すみれだけじゃなくて、(すみれの恋人の)遠野くんと接している時も」
すみれと真奈には”特別な言語”がある
——すみれと真奈は不思議な絆で結ばれていましたが、岸井さんは二人の関係をどんな風に捉えていました?
「ベタベタした仲の良さじゃないですよね。二人の間には特別な言語があったんじゃないでしょうか。そこに第三者がいると、二人がなんで盛り上がっているのかわからないというか。あのふたりは無駄話をしているうちに一日が終わる、なんてことはなかったんじゃないかって思います。もう少し意味がある、心に残るような時間を過ごしたかった。とくに真奈はそう思っていたんじゃないかと思いますね」
——真奈にとってすみれと過ごす時間は特別な時間だったんですね。
「そうですね。真奈はすみれに憧れみたいな気持ちを持っていたので、〈すみれにとって意味があることを喋りたい〉と思っていたんじゃないかと思います」
——真奈はすみれのどんなところ憧れていたんだと思いますか?
「真奈は引っ込み思案で、まわりとうまく馴染めないタイプなんですよね。でも、すみれはすぐ行動に移せるし、それをスマートにできる。そういうところは真奈と対照的だと思いました。でも、二人はそれぞれの違いを受け入れることができる。そして、長い間、離れていても、二人の関係は変わらない気がしますね」
——二人の関係は人によって捉え方は変わるかもしれませんがね。岸井さんにとって親友はどんな存在ですか?
「私は一人で黙々と考えているタイプで、あまり人に相談したり、自分のことを喋ったりしないんです。でも、たまに自分のことをちょっと話した時は、普段話していないぶん、言葉にまとまりがないというか、感覚的な話になってしまうんですけど、親友はそれをわかってくれるというか」
——それは真奈とすみれのように共通言語があるということですよね。
「はい。少ない言葉でより多くをわかってくれる存在というか。あと、一緒にいるとパワーがもらえて元気になる。悲しいことがあっても、結局最後には笑い話になるんです」
——辛い時に愚痴を聞いてくれる、というのとは、ちょっと違う感じですね。
「もともと、私は愚痴をこぼすタイプじゃないんですけど、辛いこととか悔しいことがあった時、親友は〈それはこういう風に捉えたら良いんじゃない?〉ってアドバイスしてくれて、こっちの気持ちを軽くしてくれるんです。背負いすぎているものを正しい重量に変えてくれるというか。〈そこは気にしなくても良いんじゃない?〉って、いらないものを取り除いてくれる」
——一緒に気持ちを整理してくれる、というのは心強い存在ですね。すみれと真奈が一緒にいるシーンで印象に残っているものはありますか?
「電車に乗って旅行するシーンかな。あのシーンは、実際に運行している電車に乗って撮影したんです。まだ真奈とすみれは出会ったばかりなので、電車の中では他愛のない話をしていてて。しりとりをやるんですけど、途中からアドリブで自由にやったりして楽しかったです。車窓から見える景色も美しくて、撮影帰りの電車では旅行気分を満喫しました(笑)」
海外旅行は一人で行く派
——この映画の中で旅が重要な役割を果たしますが、岸井さんは旅行は結構行くほうですか?
「行きます! コロナ前はしょっちゅう一人で海外旅行に行っていたので、今行けないのがほんとに辛くて。リフレッシュの手段がそれしかなかったんですよ」
——国内より海外に行くことが多い?
「国内旅行は家族旅行しか行ったことがなくて。一人でどこかへ行くってなったら海外ですね。全然知らない言葉、食べ物も違うところに一人でバッと行って、その国の文化を満喫して、帰って来て仕事がまた始まる、みたいな感じでした」
——出かける前には下調べはします?
「調べますね。Googleマップにフラグをいっぱい立てておいて、行ってから、その日の気分で行きたいところに行く。日本にいるときは家にこもっているんですけど、海外に行くとオープンになっちゃうんです。現地で知り合った人とご飯を食べたり、一緒に美術館を回ったり」
——旅を満喫してますね(笑)。印象に残っている旅ってありますか?
「マレーシアかな? 現地に友達がいて、観光地じゃないジャングルの方に連れて行ってもらったんです。クアラルンプールから2時間くらい車で行った農場なんですけど、そこでジャックフルーツとかかぼちゃを収穫させてもらったり、そこで採れた果物のジュースを飲ませてもらったりしたんです。ジャングルからは〈キーッ!〉って猿の鳴き声が聞こえてきて、〈ここって楽園?〉って思いました(笑)」
顔から始まる映画が好き
——最高ですね(笑)。話を映画に戻しますが、完成した作品をご覧になって、どんな感想を持たれましたか?
「映画が台本とは違うところから始まっていて、それですごく興奮しました。自分の知らない映画が始まったみたいで(笑)。最初にアニメーションがあって、その後、私の顔から始まるんですけど、私は顔から始まる映画が好きなんです」
——映画のラストでも顔が印象的な使われ方をしていましたね。
「あのラストも台本とは違うんです。最後のショットはシーンとして撮影したものではなくて、ポートレートとして撮ったものだったんです。その撮影の時、どんな表情をしたら良いのかわからなかったので、中川さんに〈すみれを見ていれば良いですか?〉って聞いたんですよね。だから、あの顔は複雑な気持ちを抱きながらすみれを見ている顔なんです」
——すごく良い顔でした。
「〈こんな顔だったんだ〉って思って見てました(笑)。あと、映画の後半にもアニメーションが使われているんですけど、映画が完成するまで見ていなかったんです。そのシーンは台本では言葉で描写されていたんですけど、それがどんな映像になるのか想像できなかった。アニメーションが入ることで、真奈の心の中で起こったことがよりわかるようになったと思います。いつもは、自分が出演した映画って客観的な気持ちで見られないんですけど、今回は完成した作品が台本と変わっていたり、アニメーションが入ったりすることで新鮮な気持ちで見ることができた。一人の観客として良い映画だなって思いましたね」
model_Kishii Yukino
photograph_Osada Kasumi
styling_Morigami Setsuko
hair&make-up_Aika Yuko
interview & text_Murao Yasuo
edit_Takehara Shizuka
映画『やがて海へと届く』
4月1日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
監督・脚本:中川龍太郎
原作:彩瀬まる「やがて海へと届く」(講談社文庫)
脚本:梅原英司 音楽:小瀬村晶 アニメーション挿入曲/エンディング曲:加藤久貴
出演:岸井ゆきの 浜辺美波/杉野遥亮 中崎敏/鶴田真由 中嶋朋子 新谷ゆづみ/光石研
製作:「やがて海へと届く」製作委員会 製作幹事:ひかりTV WIT STUDIO
制作プロダクション:Tokyo New Cinema
配給:ビターズ・エンド ©2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会
公式HP:https://bitters.co.jp/yagate/
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