CULTURE & LIFE
2度目のロックダウンが始まったパリ。
ギリギリ間に合ってオペラ座へバレエを観に行ってきました。
今年の3月から2ヶ月間、ロックダウンになった期間に求めていたもの、それはオペラ座の舞台でした。
その間はインターネット上で無料でバレエの演目をいくつか観ることができましたが、やはり求めていたのはライブ感です。
10月に入ってやっとオペラ座が開き、2つの公演『Étoiles de l’Opera(エトワール・ドゥ・ロペラ)』『Rudolf Noureev(ルドルフ・ヌレエフ)』が始まりました。
2月の『ジゼル』以来、オペラ・ガルニエに行きました。
座席はソーシャルディスタンスに配慮し、全席埋まらないように間隔を空けてチケットが販売されていたので、いつもより人は少なめ。シャンパンも飲めなかったので寂しい感じでしたが、それは仕方ありません。
それでも、豪華壮麗なオペラ座の中を歩いているだけで気分は高揚します。
私が今回観たのは『Étoiles de l’Opera』。
同じ演目はもう一生観れないかもしれない、そう思ってチケットを買いました。
オーケストラピットはなし、舞台装置もなしのシンプルな舞台で、エトワールたちはピアノの演奏に合わせて踊ります。
まずエトワールのマチュー・ガニオがソロで踊る『Clair de Lune(月の光)』。この曲も大好きですが、繊細な動きはこの世の人間のものとは思えないくらい美しく、最初から涙が出そうでした。
『A Suite of Dances』はユーゴ・マルシャンがチェロ奏者オフェリー・ガイヤールの演奏と共に踊る演目。息遣いが遠くまで聞こえるほど激しく踊り、背の高い彼は舞台映えして迫力がありました。
最後は『 La Dame aux Camelias(椿姫)』。
ローラ・エケとマチュ・ガニオのパ・ド・ドゥ(男女2人の踊り)でロマンティックに締めくくり、夢のような時間を過ごしました。
その1週間後のこと。
茶道のお稽古で一緒だったフルート奏者のマリコさんが7年間過ごしたパリから日本に完全帰国されるという知らせが。
“茶道の先生からの色紙に、パリらしいデッサンを描いて欲しい”と依頼を受けました。
音楽に関係していて、パリらしい情景…と考えを巡らせて思いついたのは、やはりオペラ座。
デッサンを描き、オペラ『魔笛』の一節も入れました。マリコさんの日本での活躍を祈りつつ、私も日本を回想したひとときでした。
この写真の日は、マリコさんにとってパリで最後となる茶事で、しかも亭主を務められました。
私の描いた色紙は本席前の待合いの掛軸にフルートと共に飾っていただきました。そして茶事でのお菓子はお手製で笛の形、御銘は『シンフォニー』だったそうです。
茶事も毎回一生に一回きりのもの、フルートを演奏しながらの茶事は忘れられない素敵な時間になったはずです。
text:竹内 仁海
パリ在住8年目。
イタリア人の夫とパリ4区にあるカリグラフィー専門店 “メロディ グラフィック”を経営する傍らカリグラファーとして活躍。結婚式やパーティ、パリコレの招待状や宛名書き、メッセージの代筆、ロゴ制作、フランス映画・コマーシャルの演出アイテムとしてカリグラフィーを担当。
パリから“暮らしの美学”をお届けします。
Instagram:@melodiesgraphiques
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