CULTURE & LIFE
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「ないものはない」。島の人たちの熱い想いと苦労が詰まった島、中ノ島海士町。
様々な島旅の記憶を手繰り寄せてすぐに思い浮かぶのは島根県隠岐諸島(おきしょとう)にある中ノ島の海士町。町長をはじめ島の人たちの熱い想いと苦労が詰まった島です。
「ないものはない」。船を降りると大きな文字でそう書かれたポスターがたくさん出迎えてくれました。どういう意味か島に住む友人に聞いてみると「なくてもよい」「大事なことはすべてここある」の2重の意味を持つそう。そんな風に自分達のスローガンのような言葉を港に掲げている島はあまり見たことがありません。ほとんどの島が「ようこそ」の意味を持つ島の方言が大きく掲げられています。
実は海士町は「まちづくり」と「教育」の先駆者。借金105億円という状態の中、財政破綻する可能性があった海士町は2005年に島の職員たちが自ら給与カットを申し出て「日本一給料の安い自治体」となったといいます。
生き残りをかけ、細胞を壊すことなく冷凍し鮮度を保ったまま魚介を出荷できる「CASシステム」という最新の技術を5億円をかけて導入。たちまち新鮮な魚介が本州で人気となりました。少子化が進んで廃校寸前だった高校もIターン移住者を巻き込んだ取り組みで、島外からの入学希望者も増えたそう。
ブランド牛の隠岐牛はインドの牛のようにのんびり。車なんて気にせず道をゆっくり歩いています。島なのに豊富な湧水があることにも驚きました。この綺麗な水の恵みと島の人たちの努力により、海士町ブランドのお米とお酒も作られています。農業も、漁業もここまで豊かな島は他にあまり聞いた事がありません。
都心から移住した夫婦が始めた「あまのーら」プロジェクト。
そんな海士町でいまひっそりと注目されているのが「アヅマ堂」。築90年の古民家を改修し、菓子工房やワークショップスペースとして島の人々の憩いの場となっています。アヅマ堂のある東地区の『東』の漢字をモチーフに、『人が集う屋根』『歴史の積み重ね』『つながっていく円(縁)』『中庸にある信念』などをイメージしてつくられたロゴの暖簾が目印です。ピースマークに似ているところもお気に入り。と店主の大野さん。「ないものはない」を掲げる海士町らしいグラノーラをつくってみよう、と夫婦でこの小さなプロジェクトを始めたのだそう。今では島でも人気のお店に。
- photo アヅマ堂
今回ご紹介したいのが、ここで作られている「あまのーら」。「あまのーら」とは、海士町産の玄米と豆を使って作った玄米グラノーラのこと。写真右のオリジナル味には海士町で昔から食べられているこじょうゆ味噌を使用しており、米飴も海士の米で1から手作りしているところがポイント。オリジナル味のほかに、季節限定のフレーバーもあります。
写真の左が、山に一面に広がる野イチゴを摘んでドライ野イチゴにして入れた「ココアベリー」。これまでに、桜の塩漬けと和三盆を使った「サクラ」や、夏に採れるドライトマトを使った「カレー」、柿が豊作だった年にはドライ柿を入れた「メープルシナモン」、海士乃塩を使った「ソルト&ペッパー」の限定フレーバーを発売しています。素材の香ばしさが損なわれないように、どれも甘さは控えめに作ってあり、海士町らしいグラノーラを作るために素材やフレーバーの組み合わせを日々研究しているそう。
「あまのーら」の袋を開けると、驚くほど香ばしい香りが広がります。そのままポリポリ食べると歯ごたえの良さにびっくり。いろいろな味がします!私はヨーグルトにかけて食べてみましたが、アイスクリームにかけても、フルーツやジャム、蜂蜜と組み合わせても◎。様々な食べ方を楽しむ事ができます。一粒一粒から海士町の恵みを感じます。これはとっても身体に良さそう!
アヅマ堂には「あまのーら」の他にもいろいろと手作りのパンやベーグル、マフィン、ドーナツなどが置いてあります。
- photo アヅマ堂
- photo アヅマ堂
- photo アヅマ堂
日によって作られるものも様々。お店に行かれる前にアヅマ堂のFacebookをチェックしてみてください。
- photo アヅマ堂
「アヅマ堂」以外にも島内では「キンニャモニャセンター」、「B&Bあとどの朝食」、「OHANA cafe」で「あまのーら」を食べられます。次回、島を訪れる時には「きなこ黒蜜サンデー」を食べたい!
8月と言えばしゃもじを持って踊って踊って踊り続ける「キンニャモニャ祭り」!
夏のお祭り「キンニャモニャ祭り」も忘れてはいけません。毎年8月に島民が港周辺に集まり、しゃもじを両手に持って海士町で最も親しまれている民謡の「キンニャモニャ節」を歌いながら、子どもから大人まで夜になるまで踊り続けます。
以前、私も必死に踊りを覚えて、お祭りに参加させていただきました。たくさんの島の人たちや友人の笑顔を見ながら踊ると、自分も「海士町」という映画のほんの一部になれたかのような気分に。心から楽しんで踊っている皆さんの笑顔の背景にある苦労と島への愛情が伝わってくるような気がして、胸が熱くなるものがあったのを昨日のことのように覚えています。
夜には真上に大きな花火が打ち上げられます。こんな贅沢な花火大会、なかなか出会えません。
「ないものはない」。ここまで自分たちで島のことを考え、自分たちの島の背景や魅力を熱く語ってくれる島民を私は他では見たことがありません。ひとりひとりが自国愛の強い島国のよう。どうしても定期船の物資に頼らざるを得ない島が多い中、ここまで自立した島は少ないのではないでしょうか。今年の夏のキンニャモニャ祭の開催は残念ながら中止となってしまいましたが、また皆と踊れる日が来ることを願っています。
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