猫、猫、猫!猫づくしの、夏目漱石記念館へ【甲斐みのりの隙間の時間】 | コラム | カルチャー & ライフ | FUDGE.jp

CULTURE & LIFE

 中野区立中央図書館での講演会のため、資料作りにまちへ出る日。講演のテーマは、地下鉄東西線散歩。地下鉄乗車券を600円で購入して、中野駅から東西線で小旅行。

 図書館で話すのだから、そのあと本を読みたくなったり、本を小脇に抱えてまち歩きができるよう、まずは文豪ゆかりの場所を案内したい。最初にさっそく落合駅で下車して、「新宿区立 林芙美子記念館」へ。『放浪記』『浮雲』などで知られる作家・林芙美子が、昭和16年から昭和26年まで暮らした家。2つの日本家屋が仲良く隣同士並んでいるのは、当時は個人の建坪制限があったため。芙美子名義で生活棟を、まだ入籍はしていなかったパートナーで画家の緑敏名義で仕事場の棟を建て、そのあとすぐにつなぎ合わせた。ボランティアスタッフさんたちが、建築だったり庭に咲く花のことを教えてくださって、会話しながら和やかに過ごした。

 それから高田馬場駅の「バインミー・サンドイッチ」で、バインミーを買って昼食。ここのバインミーが大好物で、近くの出版社で撮影があるときは必ず立ち寄る。バインミーの他にも、新商品のフォーと、生春巻きも欲張り購入したため、お腹がぷっくり膨れてしまった。

 次に目指したのは、早稲田駅の「新宿区立 漱石山房記念館」。現在の新宿区喜久井町に生まれた漱石は、11年の作家生活のうち9年を早稲田の家で暮らし、そこを「漱石山房」と呼んだ。その漱石山房は昭和20年の大空襲で焼失してしまったけれど、その跡地を整備して、漱石が暮らした家(書斎・客間・回廊)を再現し、今年の9月に記念館として公開が始まった。開館したばかりだからか、漱石人気の高さからか、多くの人で混雑している。本や文机や火鉢を置いた文豪の書斎や、資料を見てまわり、1階の「カフェ・ソウセキ」でお茶をする。

 メニューには、漱石が愛した祇園坊柿を使った「柿アイスクリーム」や、漱石と交友があった芥川龍之介が好んだお菓子が。「上林春松本店」のほうじ茶や、広島「長崎堂」のバターケーキと、日頃からの好物も並んでいたので、あれこれ目移りしてしてしまう。それでもやっぱりこれだと注文したのは、「空也もなかセット」。漱石の小説に登場する銀座「空也」のもなかは、予約の時点で売り切れてしまうので、日頃なかなか購入できない。それが、ここで味わえるとは。セットでつくコーヒーは、宮内庁御用達「珠屋小林商店」のもの。紙コップの面裏には、正面と後ろ向きの猫が描かれ、猫好きにはたまらない。

 漱石の出世作『吾輩は猫である』にちなんでか、漱石山房記念館には猫の飾りがちりばめられている。早稲田駅からの道々にも、ところどころに猫をデザインした案内が。カフェでは、ブックカバー、シール、ふきん、お菓子やコーヒーまで、黒猫が描かれたおみやげを求めることもできる。その後さらに日が暮れるまで、東西線に沿って取材・撮影。最後に門前仲町駅を、小さな旅の終点にした。

 

「新宿区立 漱石山房記念館」、「カフェ・ソウセキ」の「空也もなかセット」。

「カフェ・ソウセキ」の紙コップ。表と裏に、猫のデザイン。


猫のブックカバー。


猫のシール。

猫ラベルのシール。


猫の一筆箋も販売。


エントランスでは漱石がお出迎え。

早稲田駅から「新宿区立 漱石山房記念館」までは、猫が案内。

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