CULTURE & LIFE

今回の冬のヴァカンスはイタリア!トスカーナ、ウンブリア地方へ行ってきました。

フィレンツェから南に車を走らせること1時間ちょっと、「トスカーナの宝石」と呼ばれるシエナに到着します。
街の中心には世界で一番美しい広場の一つと言われるカンポ広場があり、ホテルのバルコニーからこの景色を見渡せました。

 

この広場で年に2回開催される競馬のレースのお祭り「パリオ」が開催されます。このお祭りの開催日は4年先までホテルの予約は埋まっているそう。

12世紀から続くパリオは、15世紀の伝統衣装に身を纏ったパレードの後に競馬のレースが行われます。シエナは17の地区(コントラーダと呼ばれて、それぞれ動物などのシンボルを持っている)があり、地区対抗戦で優勝したコントラーダはアーティストがデザインした旗を商品にもらうことができます。あるコントラーダの美術館を訪れたところ、馬の洗礼場所、この数百年で勝ち取った優勝賞品の旗など珍しいものが見れました。

シエナの住人にとってのパリオは命懸けで、負け=恥ということでした。騎手はお祭り前4日間は、二人の監視人のもと誰とも話をせず、どこに眠るかも知らされないそうです。お祭りはこの広場に砂が撒かれレース自体は1分15分ほどですが、この小さな街に世界中から4万人の観客がこの独特で情熱的な戦いを見るために訪れるそう。

私もいつかは見てみたいお祭りの一つです。

 

見どころはシエナ大聖堂と隣接する塔。登ると赤茶色のレンガの屋根が連なる世界遺産の街全体が一望できます。
世界最古の銀行(ヴァチカンの銀行だったそうです!)があり富を蓄えていた街。

 

シエナに来たら美味しいものばかりが揃っています。

パスタは“Pici”という太めのパスタが伝統料理なのでこれは是非とも食べてほしい一品。そしてトスカーナ地方のニンニク、アイオーネとトマトのスープ。スープと言ってもパン粉が入っているので食べるスープといった感じ。シンプルなのになんでこんなに美味しいの!

 

イタリアを代表するトスカーナ地方のワインは、キャンティ、モンタルチーノ、モンテプルチアーノと何を飲んでも美味しい!!赤ワインはフランスワインよりイタリアワインの方が美味しいと思います。
キアニーナ(白い高級銘柄牛)のタルタル、炭火焼きも美味しさのあまり凄い量をペロリと食べられてしまうから自分でもびっくりです。

 

シエナに3回来ていて今回予約してやっと入れた「キジアーナ音楽院」。
私のハープの先生が東京芸大1年生の時に短期留学していた場所で、コンサートをしたサロンが素敵だったとお話を聞いていたのでいつか行きたいと思っていました。

 

12世紀から14世紀にかけて建てられた宮殿は、1932年にグイド・キージ・サラチーニ伯爵によって音楽院が設立されました。
宮殿内にはサラチーニ家の代々受け継がれているプライベートコレクションの絵画や美術品が設置されています。

 

20世紀に作られたコンサートサロンはヴェネチアンロココ様式で、2階部分にはミュージシャンを見ない席が120席あります。
グイド伯爵はショパン、ベートーヴェン、ヴィバルディを愛し、ここでよくコンサートを開いたそうです。ステージ部分は隣のサロンと繋がっていて、友人を招いて音楽を聴きながらパーティを楽しみ、音楽家の演奏が素晴らしければ演奏家を隣の部屋に招き入れ、演奏が気に入らなければ扉を閉めたといいます。

ドイツの王妃が宿泊されていたお部屋など、どのお部屋も素晴らしかったですが、あの音楽家リストが寄贈したピアノがあったのには驚きました。

 

これはリストが作らせたピアノで弦の位置もピアノの形も普通のピアノとは違います。リストが作曲した曲しか弾けないという特別なもの。
弾かないと動かなくなるというので定期的にこちらに通う生徒さんが演奏されるそうです。

こちらの音楽院に入りたいという希望者は毎年6000人いて、その中から選ばれるのは500人と狭き門。3000のオリジナルの楽譜を所有、73000の書類がありクラシック音楽との教育と研究に焦点を当てています。
ここで学べる生徒さんは本当に幸運ですね。

 

シエナからピエンツァ、モンタルチーノの街にに向かうまでのオルチャ渓谷の風景、ここは世界の絶景の一つ。このチャペルはトスカーナの絵葉書で一番有名なのでは?車を止めてチャペルまで歩くと20分ほどです。
丘が波打っているようで、何度訪れても感動する場所。

 

夫の実家近くにある5つ星リゾートホテル「Borgo Brufa」。

温水プールは室内プールから屋外プールまでつながっていて、葡萄畑の景色が見渡せます。
死海のプールでは塩分多く含んでいるので体がぷかぷか浮くのを楽しみ、マッサージを受けたり、温度や湿度の違うサウナが楽しめます。

 

夜は併設しているミシュラン一つ星レストラン「Elementi fine dining」で家族とお食事。33歳の若いシェフのメニューは驚きに満ちていて、洗練されたお料理ばかりでした。
ウンブリア地方のこだわりの食材を使ったデギュスタツィオーネのコースを選び、作りたてのサラミ、白黒の豚のお肉とグアンチャーレ、鰻とトマトソース、キャラメル味のチーズ、出来立てザバイオーネは新しい味の発見でした。

 

夫の親友の家に招待されていただいたのは、お庭で食べきれないほど採れるというトリュフ料理。

メニューはフェンネルとオレンジのサラダ、暖炉で焼いたブルスケッタにトリュフ、溶かしたスカモルツァ(燻製チーズ)にトリュフ、ズッキーニの花のリゾットにトリュフ、近所の方が朝に狩猟で狩ってきたキジのお肉、その内臓のパテ、デザートには学生の時パン屋さんで働いていたという旦那さんの手作りシュトゥルーデルと贅沢なものでした。
3人の破天荒なアーティストの友達の話にみんな笑い転げて本当に楽しい夜でした。

 

フィレンツェでは数回泊まったことがあるホテル、Burchiantiへ。皆さんフレンドリーで、立地も良くて、お部屋は18世紀のフレスコ画が残っています。

ベッドに寝転がると天井の眺めが素敵で、早速画材屋さん「Zecchi」で買ってきたグアッシュを使って天井の絵を簡単にデッサン、絵葉書を書いたりゆっくりした時間を過ごしました。

 

イタリアのカフェは朝ご飯が充実していて、ミニサンドイッチやひと口サイズのタルトやケーキがちょこちょこ選べます。

フィレンツェの伝統菓子はスキアッチャータ。そして栗の小麦粉を使ったぺったんこのお菓子カスタニャッチョ、お土産に最適なのはパンフォルテ、どれも美味しいです。

そしてコーヒーが美味しいのでカフェをハシゴするのが毎朝の楽しみ。
イタリアのコーヒーが美味しくてフランスのコーヒーがいまいちなのはコーヒー豆の焙煎方法が違うからなんだとか。

 

最終日に行った1659年リッカルディ家のコレクションを基に設立された図書館、ここは別の次元に来てしまったという感じ。
普段は予約なしでは入れないという場所ですが、入り口で警備員の方が図書館に電話をしてくれて運良く入れてもらえました。

ルネサンス期の貴重な写本が展示されていて、羊皮紙の表紙にタイトルがカリグラフィーで書かれている本をたくさん目にして勉強になりました。
学問研究者や歴史愛好会にとってはたまらない場所だと思います。私も時間があったら数日通いたい場所です。

 

楽しい時間はあっという間でした。
フィレンツェの人々はとても優しくて、閉まっていた郵便局では私が切手を買うためだけに開けてくれたり(パリではあり得ません)、私がフランス語で話をしていたらフランス語で説明してくれたり、6代続いた文房具屋さんのアトリエでは代々受け継がれてきたお宝を見せてもらったり、レストラン前で出会ったマダムと一緒にお食事を楽しんだりと素敵な思い出ができました。

ウフィツィ美術館やドゥオーモなど歴史的な名所を訪ずれるのはもちろん、アルノ川沿いをお散歩するのもおすすめです。小さい可愛いお店を見つけることができますよ!

 

 

text:竹内 仁海

パリ在住13年目。
イタリア人の夫とパリ4区にあるカリグラフィー専門店 “メロディ グラフィック”を経営する傍らカリグラファーとして活躍。結婚式やパーティ、パリコレの招待状や宛名書き、メッセージの代筆、ロゴ制作、フランス映画・コマーシャルの演出アイテムとしてカリグラフィーを担当。
パリから“暮らしの美学”をお届けします。

Instagram:@melodiesgraphiques

 

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