クリエイティブチームDo it Theater（ドゥイット・シアター）がテーマごとにおすすめの映画を3作品紹介する、連載《土曜日のシネマサロン》。
第64回目のテーマは、「自分らしい生き方とは？今後の人生を考える映画」です。

Do it Theaterの阪実莉（さか みのり）です。この連載はDo it Theater女子部が様々な切り口のテーマで、おすすめ映画をリレー方式でご紹介しています。

冬は外に出るのも寒いし、家でゆっくり考え事をすることもしばしば。春に向けて転職活動をしたり、勉強したりしている方も多いのではないのでしょうか。
今回は「自分らしい生き方とは？今後の人生を考える映画」というテーマで『イントゥ・ザ・ワイルド』『命みじかし、恋せよ乙女』『マダム・イン・ニューヨーク』の3作品を紹介します。

良い映画は人生の節目節目で道筋を示してくれたり、新しいことに気づかせてくれたりするものですよね。みなさんが良い作品に出会えることを祈っています。

 

冒険で世界と自分を知る

Illustration_MARU

title：『イントゥ・ザ・ワイルド』

【story】
1990年、クリストファー・マッキャンドレスは優秀な成績で大学を卒業。資本主義思想の強い両親に嫌気がさしたクリスは全財産を慈善団体へ寄付し、身分証を捨て、家族や友達にも何も告げず旅に出る。ヒッピーの夫婦や歌を歌う少女など様々な人々と交流しながら旅を続けるうちに、アラスカへ向かうことを決める。途中立ち寄ったソルトン・シティの革職人ロンと親しくなり、仕事を手伝いながら一緒に過ごすクリス。ロンから養子縁組の提案を受けるが、クリスは戻ってきたら話をすると言い、アラスカへと旅立っていく。

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学生時代に観たことがある方も多いかもしれません。バスの上に座っているポスタービジュアルが有名ですよね。この作品は、主人公クリスが自分の人生を探すため、一人で荒野へ旅に出る、タイトル通りワイルドなお話ですが、なんと実話なのです。冒険家ジョン・クラカワー著のノンフィクション小説「荒野へ」を原作として制作されました。
クリスは思い切って家族の元を断ち、旅に出て、まっさらな自分で新しいものや知らないことに出会います。知ることで人生が輝き、旅で世界との接点をもち、自分の人生を取り戻す。最初は大丈夫かな……？とドキドキしますが、後半は彼の成長が感じられ、清々しい気持ちで安心して観ることができます。
「今の生活を変えたい」とか、「自分は何をしたくて生きているんだろう？」と思った時にぜひ観て欲しい作品です。観た後は、現実を少し俯瞰して見れる気持ちになります。映し出されるアメリカの大自然にも癒されますよ。

 

ドイツから日本に、旅を通して人生と向き合う

©2019 OLGA FILM GMBH, ROLIZE GMBH & CO. KG

title：『命みじかし、恋せよ乙女』

【story】
ドイツ・ミュンヘン。酒に溺れ、仕事も家庭も生きる希望さえも失ったカールが、泥水の底で「助けて」とつぶやいた翌日、カールの亡き父ルディと親交があった日本人女性のユウが訪ねてくる。カールはユウの希望で、父が生前暮らしていた家を訪れることに。そこで数日間過ごす中で自分の過去と対峙し、生きる希望を徐々に見出し始めていたある日、カールの元からユウは忽然と姿を消してしまう。

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本作は、女優・樹木希林さんの最後の出演作且つ海外デビュー作となったヒューマンドラマ。前半の舞台はドイツ、後半でカールは日本へと渡り、物語の舞台は茅ヶ崎へと移ります。
絶望の淵を生きていたカールですが、不思議な女性ユウと出会い、影響を受け、ユウを探しにドイツから日本へ行くことに。カールは旅を通して自分の人生と向き合い、少しずつ前向きな気持ちに変わっていきます。
途中、樹木希林さん演じるユウの祖母がぽそっと話す、「生きてるんだから、幸せにならなきゃダメね」という台詞を聞いた瞬間、グッと心が掴まれました。人生の良さをしんみりと考えさせてくれる映画なので、日々の生活に疲れて元気が出ないときに観ると良いかもしれません。外国人の監督が描く日本だからこその面白さも感じられる作品です。
また作中で登場する茅ヶ崎館は、故・小津安二郎監督が定宿にしており、現在は是枝裕和監督が脚本を書きに訪れる、映画ファンにはたまらない旅館なので、そちらも気になる方は是非！素敵な旦那さんが出迎えてくれますよ。

 

専業主婦、ニューヨークで英語を猛勉強

© Eros International Ltd.

title：『マダム・イン・ニューヨーク』

【story】
料理上手のインド人専業主婦シャシは、二人の子どもとビジネスマンの夫に尽くす日々。しかし家族の中で自分だけ英語が出来ず、そのことをたびたびバカにされて不満を募らせていた。そんなある日、ニューヨークに暮らす姉から姪の結婚式の手伝いを頼まれ、家族より一足先にシャシはニューヨークへと向かう。カフェに入るもコーヒー一杯すら注文できず落ち込んでいたシャシの目に、「4週間で英語が話せる」と謳う英会話学校の広告が飛び込んでくる。

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インド国内の、女性に対する保守的価値観から期待される家事や伝統行事は100点満点こなせるシャシ。しかし、新しいことは少し苦手。そのことを子供と夫にバカにされ、「自分は尊重されていないのでは？」と傷つき、シャシは落ち込んでしまいます。しかし、ニューヨークで過ごすことをきっかけに家族に内緒で英語を猛勉強することに（かっこいい！）。
異国で一人、右も左も分からない状況の中で努力して誇りと自信を取り戻してゆく姿に心が打たれます。彼女自身、チャーミングなのに奥ゆかしさや強さも併せ持ち、変化していく様子がとても素敵です。自分自身が変わることで、周囲の対応も変わり、人生の楽しみかたを知ることができます。自分の物語の主人公は自分であり、できないことはないと感じさせれくれる作品でした。
笑いあり涙あり、誰と観ても楽しめる映画です。

 

今回は「自分らしい生き方とは？　今後の人生を考える映画」というテーマで、全てを捨てて冒険で自分探しをする『イントゥ・ザ・ワイルド』、人生の良さを旅を通して感じる『命みじかし、恋せよ乙女』、人生の楽しみ方を自分で見つける『マダム・イン・ニューヨーク』とそれぞれ別の方向から、人生を考える映画を選んでみました。是非、気分に合わせてセレクトして観てくださいね。自分らしい生き方を探すのはなかなか難しいものですが、たくさんの作品に触れて、覗ける扉をたくさんを持っておけば、毎日をより楽しんで過ごせるかもしれませんね。

 

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