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12.DEC.2016

デヴィッド・ボウイそのものがアートだ。

CULTURE
規格外の大展覧会『DAVID BOWIE is』が来日!

 

麗しの化粧姿とグラマラスな衣装に身を包んだ火星から来た男は、70年代初頭に世を席巻したグラム・ロックの立役者となり、いつしか音楽という枠組を越えて、自身の存在そのものまでがアートフォーム化されていくことになる。

 

レディー・ガガやマドンナといったポップスターを筆頭に、エディ・スリマンなどの数多くのファッショニスタにも多大なる影響を与えたロックスター、デヴィッド・ボウイ。

 

当時、風雲児的な存在であったアレキサンダー・マックイーンに発注したユニオンジャックのコート。アルバム『アースリング』で使用(1997年) © Frank W Ockenfels 3

当時、風雲児的な存在であったアレキサンダー・マックイーンに発注したユニオンジャックのコート。アルバム『アースリング』で使用(1997年)
Original photography for the Earthling album cover, 1997. Photograph by Frank W Ockenfels 3 © Frank W Ockenfels 3

 

今年の1月に急逝したスーパースターが残したキャリアと功績を、音楽のみならず、衣装、映像、アートなどの多角的な視点で振り返った、規格外の大展覧会『DAVID BOWIE is』がいよいよ日本に上陸する。

 

存命中の2013年にロンドンを皮切りに開催され、以降、サンパウロ、ベルリン、パリなどの世界9都市を巡回し、現時点で延べ150万人以上もの動員を記録している。ボウイを知らない世代をも巻き込んで、なぜこれほどまでに本展覧会に、そして彼に世界が熱狂しているのか。

 

幾何学的なストライプのボディスーツに身をまとったボウイ。「アラジン・セインツアー」のステージ衣装で、デザインは山本寛斎(1973年) ©Sukita / The David Bowie Archive

幾何学的なストライプのボディスーツに身をまとったボウイ。「アラジン・セインツアー」のステージ衣装で、デザインは山本寛斎(1973年)
Striped bodysuit for the Aladdin Sane tour, 1973. Design by Kansai Yamamoto. Photograph by Masayoshi Sukita © Sukita / The David Bowie Archive

ロックスターの悲劇を歌い、アーティストとしての確固たる地位を築いた『ジギー・スターダスト』の本人直筆の歌詞(1972年) © Victoria and Albert Museum

ロックスターの悲劇を歌い、アーティストとしての確固たる地位を築いた『ジギー・スターダスト』の本人直筆の歌詞(1972年)
Original lyrics for 'Ziggy Stardust,' by David Bowie, 1972 Courtesy of The David Bowie Archive Image © Victoria and Albert Museum

 

彼に惹きつけられる理由が知りたい! ということで、今回、ボウイにゆかりのあるプロデューサー・編集者の熊谷朋哉さんに、大回顧展の見どころやボウイの魅力についてお話を伺うことができた。

 

熊谷さんはボウイのアルバム『THE NEXT DAY』や『★』などのCDの対訳や、2014年に東京で開催され、パリにも巡回して話題を呼んだ展覧会『TIME – David Bowie by Masayoshi Sukita』のプロデュースにも携わっている。

 

『THE NEXT DAY』(2013年) ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル

『THE NEXT DAY』(2013年)
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル

 

『★(ブラックスター)』(2016年) ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル

『★(ブラックスター)』(2016年)
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル

 

——今回の展覧会があまりにも画期的であると、世界中から絶賛されているのはどういった理由からでしょうか?

 

ひとりの“ポピュラー・アーティスト”の人間としての軌跡、表現の歴史、そしてその表現や活動が影響を及ぼしたすべてを、博物館展示という角度から捉えようとした初の展覧会だからだと思います。

 

——生前にスタートした展覧会ですが、本人は制作に関わっていたのでしょうか?

 

彼自身は無関係を装っていましたが、無関係ではありえない展示内容です(笑)。一方で、そう言っておくことが、現役(=生きている)アーティストとしてのボウイの矜持(プライド)であったこともよく理解できます。

 

盟友でもある衣装デザイナーのナターシャ・コルニロフがデザインしたアルバム『スケアリー・モンスター』時の衣装(1980年) © Duffy Archive & The David Bowie Archive

盟友でもある衣装デザイナーのナターシャ・コルニロフがデザインしたシングル『アッシュズ・トゥ・アッシュズ』撮影時の衣装(1980年)
David Bowie during the filming of the ‘Ashes to Ashes' video, 1980. Photograph by Brian Duffy Photo Duffy © Duffy Archive & The David Bowie Archive

 

——今回の展覧会における見どころ、ポイントがあれば教えてください。

 

コアなファンにとっても、今回のような機会でなくては絶対に見られないものばかりです。衣装などはもちろん、歌詞やデザイン、ステージプランのイメージ図、1980年の舞台『エレファント・マン』で彼がしめたふんどしにいたるまで。

 

ファッション面では、ロックやボウイを知らなくても楽しめる内容だと思います。具体的には、ピーコック革命以降のメンズファッションの流れから、彼自身のスタイルへと変化していく過程でしょうか。

 

カルチャー面で言えば、やはりジェンダーを飛び越えていく部分が見どころかもしれません。そして、ひとりのポップ/ロックスターの活動領域が拡大・深化されていくさまは、20世紀〜21世紀初頭のカルチャー史として貴重なものです。ボウイの歴史は、同時期のカルチャーの歴史でもあると言えるのではないでしょうか。

 

ボウイのベストワークに選ぶ人も多い名作『ヒーローズ』。そのアルバムジャケットのモチーフとなった本人によるスケッチ(1978年) © Victoria and Albert Museum

ボウイのベストワークに選ぶ人も多い名作『ヒーローズ』。そのアルバムジャケットを題材にした本人によるスケッチ(1978年)
Print after a self-portrait by David Bowie,1978 Courtesy of The David Bowie Archive Image © Victoria and Albert Museum

 

——「DAVID BOWIE is」は今となっては「is」と現在形のままであることが印象的です。そもそも「is」にはどういった想いが込められているのでしょうか?

 

「is」についてですが、まずは2013年以前の約10年間の沈黙(引退説などがささやかれていました)に対応するものだったはずです。しかしながら実際のボウイの肉体の死があったために、それが象徴的な意味を持ってしまうことになりました。

 

ボウイの行ってきた表現は、ひとりのロックスターの存在というものが、肉体はもちろんですが、それを超えた、作品や活動すべてによるものだということを明確に示していたと思います。彼の肉体はなくなりましたが、ボウイは、さらにその存在感(=is)を増していることは事実です。

 

シングル「火星の生活」のミュージックビデオの衣装でもあるアイスブルーのタイトスーツ。フレディ・バレッティの手によるもの(1972年) © Victoria and Albert Museum

シングル「火星の生活」のミュージックビデオの衣装でもあるアイスブルーのタイトスーツ。フレディ・バレッティの手によるもの(1972年)
Ice-blue suit, 1972. Designed by Freddie Burretti for the 'Life on Mars?' video Courtesy of The David Bowie Archive Image © Victoria and Albert Museum

 

——ボウイとの思い出深いエピソードがあれば教えてください。

 

写真家の鋤田正義さんのご紹介で、2009年にNYの事務所でお会いしました。大変にジェントルな方でした。そのときの約束を守っていただき、その後に彼から貴重な原稿をいただくことができたのは編集者として生涯一の記憶です。また、彼が英語をほとんど使わない鋤田さんと、不思議なことば(?)で親しく長時間語り合っていたことが印象的でした。

 

——なぜこれほどまでに数多くのクリエイターや、世代を超えた人々に愛され続けていると思いますか?

 

単純に、圧倒的な知性と感性、そしてそれ故の(これが大事です)人柄の良さがあったと思います。あそこまで秀でた人間になると、他人には優しくしかできなくなってしまうものなのだろうとも感じます。

 

ボウイに倣うわけではありませんが、アートとポピュラー・カルチャーのなかで、自分と自分たちにしかできない仕事を、今後も誠実に重ねていくことができればと考えています。

 

会場では、スターマンの衣装とBBCの音楽番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』出演時の映像も流される。 © Eikon/ G.Perticoni

会場では、スターマンの衣装とBBCの音楽番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』出演時の映像も流される。
© Eikon/ G.Perticoni

 

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デヴィッド・ボウイのことを知らなくても、展示されている革新的なビジュアルやジェンダーレスなファッションなどを通して、存在自体がアートでもあったデヴィッド・ボウイという輪郭が、彼が歩んできた時代背景とともにうっすらと見えてくるかもしれない。

 

永遠のスターマンでもある美しいデヴィッド・ボウイに会いに、そして彼の知られざる魅力に触れてみてはいかが?

 

◎熊谷朋哉さん

SLOGAN代表。書籍の編集、広告プロデュース、ディレクションなどに幅広く携わる。編著書に『デヴィッド・ボウイ・アーカイヴ』『ラジカセ for フューチャー』など多数。近作として、写真家の鋤田正義氏による写真集『MIYAVI x SUKITA』を上梓したばかり。「鋤田さんがMIYAVIくんを、“ボウイ以来の、自分を壊すことを怖れない存在”と話していたことが記憶に残っています」

http://www.slogan.co.jp/

 

『DAVID BOWIE is』デヴィッド・ボウイ大回顧展

日程:2017/1/8(日)〜4/9(日)

会場:寺田倉庫G1ビル(天王洲)

ライヴパフォーマンスの再体験、時代を超越したステージ衣装の展示、未知なる音楽との体感、さらには親日家の彼ならではの日本独自の展示コーナーまでも網羅。その貴重な展示数は優に300点以上を超える。

http://davidbowieis.jp/

http://www.sonymusic.co.jp/artist/DavidBowie/

 

TEXT:TAKAHIRO ONO

SNAP